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〈生活部記者の両親ダブル介護〉(17) 暮らしの記憶

(2017年5月24日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

“歴史”を知れば納得の日々

画像三浦家の民俗学的資料「父母の結婚写真」。これが撮影された日時もまだ解明されていません

 介護のコラムのはずなのに、最近年寄りの昔話ばかり。もしや回数を稼ぐための筆者のたくらみではないか−。読者にそう悟られる前に説明せねばならない。それもあるが、介護する側の心理的負担を軽くするために「介護民俗学」の手法が実に有効だと感じるためだ。

 介護民俗学とは民俗学者から老人施設の職員に転じた六車(むぐるま)由実さんが提唱する概念だ。2014年2月19日付の当生活面でも紹介されている。

 私の理解するところで説明すると、介護民俗学では高齢者をその時代を目撃し、体験してきた「記憶の器」だととらえる。一人の高齢者、一つの老人施設は、地元のどんな郷土資料館や、どんな図書館も及ばない生きた暮らしの記憶が収蔵されているのだ。重要文化財、場合によっては国宝級でもあろう。

 一見無意味に見える認知症患者の行動も、この手法を応用すると理解できる。母(81)もまだ歩き回れた時、トイレに入るたびにトイレットペーパーを手にぐるぐる巻きにしていた。また無駄にして…とイラッとくることもあったが、お尻を拭く紙にも欠いていた時代を経たことを思うと、「そりゃ、紙があるうちにゲットしとこうと思うよな」と納得できる。「お母さん、紙ならいっぱいありますよ。もう行列に並ばなくてもいいんですよ」「ほうかね」。やりとりもやさしくなる。

 想定外の展開に振り回されることばかりの介護では、この「理解」と「納得」こそ、日々を穏やかにしてくれるのだ。使える介護民俗学。よかった。次回もこの応用例で書きつなごう。 (三浦耕喜)

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