つなごう医療 中日メディカルサイト

「言葉の壁」 ストレスに 医療通訳 多い精神科派遣

(2017年5月26日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する
画像医療通訳の派遣先で歯科医師から患者の病状を聞く出野せい子さん=名古屋市南区の中京病院で

 外国人患者が円滑に治療を受けられるよう、県や医療機関が運営する「あいち医療通訳システム」で、医療通訳の派遣先は、内科に次いで精神科が多いことが分かった。定住者らが通訳の対象だが、「言葉の壁」などでストレスを抱えているとみられる。名古屋外国語大の浅野輝子教授らが調査し、結果をまとめた。(相坂穣)

 製造業が盛んな県内には、東京に次ぐ全国2位の22万人の外国人が暮らす。

 日常会話はある程度できても、病院で治療を受ける際には、日本語に不安を抱える人も多い。多くは日本の健康保険に加入しているが、高額医療費の助成など複雑な制度を理解できず、活用できていない例もある。

 愛知県は2011年に医師会、病院協会、大学、市町村などと「あいち医療通訳システム推進協議会」を発足させた。ポルトガル語、スペイン語、中国語、英語、フィリピン語の5言語の医療通訳を16年度までに270人養成した。

 通訳を派遣した実績は、14年度に791件、15年度に982件、16年度に1279件と右肩上がりが続く。

 浅野教授らは14〜16年度に調査を実施。医療通訳47人にインターネットを通じて派遣の実態を尋ね、45人が回答した。

医療通訳の派遣の多い診療所

 派遣された先は内科・62%、精神科・58%、小児科・51%、産科・36%、婦人科・31%の順だった(複数回答)。

 浅野教授によると、内科では、がんの治療など、事前に本人の同意が必要な場合に、病院が通訳を求めることが多い。精神科は「3K(きつい、汚い、危険)」職場の長時間労働でストレスをためたり、日本語が話せないために職場で孤立したりして、うつ病を発症したケースが多いという。

 名古屋市千種区の出野(での)せい子さん(81)は、30年間、ブラジルで暮らした経験があり、14年からポルトガル語の医療通訳に登録している。月に10〜15件の通訳を頼まれ、うち3割ほどが精神科という。

 最近は、ブラジル人の男児が小学校になじめず、引きこもり、過食症で入院する際に立ち合った。「親が仕事で忙しく、心を病む子どもが目立つ。年齢が上がると、薬物やアルコール依存になる若者もいる。多くは、成長期に言葉が通じなかったストレスが背景にある」と話す。

新たに4言語通訳を養成へ ベトナムなど

 「あいち医療通訳システム」は、従来の5言語に加え、新たにベトナム、インドネシア、ネパール、タイの4言語の通訳を養成する。29日まで研修の受講希望者を募っている。

 昨年末の法務省統計によると、県内在住のベトナム人は前年比36%増の1万7882人、ネパール人は38%増の5625人、インドネシア人は30%増の5375人で、いずれも3割超の高い伸びとなった。多くは、東南アジアなどからの技能実習生とみられる。

 募集するのは、4言語を母語とし、社会生活に必要な日本語と英語を十分理解し、表現する能力がある人。筆記や面接試験に合格すれば、7~11月に、36時間の基礎研修などを無料で受け、医療知識や通訳技術を身に付けることができる。

 医療通訳として派遣されると、2時間3千~5千円程度の報酬を受けられる。費用は、病院と患者が折半で負担する。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人