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(2017年5月30日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

名古屋小児がん基金1周年

 小児がんの治療・研究を充実させることを目指す「一般社団法人名古屋小児がん基金」が設立1周年を迎え、6月11日午後1時半から名古屋大医学部(名古屋市昭和区)で記念イベントが開かれる。基金の規模はまだ小さいが、最新の診断法や治療法を闘病中の子どもたちに役立てるために使われている。(編集委員・安藤明夫)

 同基金は、名古屋大医学部小児科の小島勢二名誉教授(66)が昨年3月の退官前に提唱し、同年6月に設立された。

 名大小児科は、全国で最も多くの小児がん患者を受け入れ、研究面もトップクラス。がん治療の分野で、高額な新薬が国民皆保険制度を脅かす中、大学主導で低コストの治療法や診断法を開発するため、基金が必要と設立を呼び掛けた。

 同科では、白血病細胞を殺す遺伝子を患者のリンパ球に組み込み、増殖させて体内に戻すCAR−T療法の研究が、臨床応用の目前まで来ている。国の認可が出れば患者の自己負担は100万円以下で済む見通しだ。

 しかし、同病院に難治性の白血病で入院していた柳田優芽(ゆめ)ちゃん=2015年1月に2歳で死去=が、米国の病院で同種の治療を受けるため渡航を目指したときは「1億5千万円が必要」と提示された。大勢の有志の協力で必要額がほぼ集まったものの、相手側の受け入れ態勢が整わず、願いは果たせなかった。そんな経験が、コストのかからない治療法の開発への思いを強くし、基金づくりの原動力となった。

 この1年で寄せられた寄付は、約2千万円。昨年には、同科に入院していた女児が、低コストのCAR−T療法を臨床応用している中国の病院で治療を受けることになり、その費用の補助に充てられた。同科は遺伝子の塩基配列を高速で読み取れる「次世代シーケンサー(DNA解析装置)」を使って、白血病の再発リスクを測定する検査法も開発。患者の検査に利用されその費用にも充てられた。

 小島名誉教授は「子どもたちの命を守るための協力に感謝したい。さらに多くの人に基金の意義を理解していただき、輪を広げていきたい」と話す。

闘病中、矢野さんから励まし

画像矢野きよ実さんから送られたお見舞いの書額や陶板を手に、感謝の思いを語る太田晃嗣さん=名古屋市昭和区で

 名古屋大医学部で開かれる基金設立1周年を記念したイベントでは、名古屋在住のタレントで書道家の矢野きよ実さんが司会を務める。イベントで、その矢野さんに会うことを楽しみにしているのが、同病院小児科の看護師・太田晃嗣(こうじ)さん(26)だ。

 太田さんは高校時代、治療の難しい再生不良性貧血で同病院に長期入院した。病名を告げられ、不安を募らせていたころ、矢野さんからお見舞いが届いた。矢野さん直筆の「よくなる」と書かれた額と「無敵」の陶板、励ましの手紙もあった。同級生の母親が、知り合いの矢野さんの書展に行き相談したところ、快くお見舞いを引き受けてくれたという。翌年、太田さんが骨髄移植の手術を受けた朝にも、矢野さんが司会していた情報番組で名前を挙げて応援してくれた。「ぜひ、矢野さんにお礼が言いたいんです」

画像矢野きよ実さん

 その後、順調に回復し、医療の世界に入った太田さんは、新生児たちの看護に携わる一方、同病院を退院した小児がんなどの経験者のグループ「クロワッサンズ」を主宰し、活動している。矢野さんが小児がん基金の活動に協力して、1周年のイベントで無償で司会を務めることを知り、お礼を述べる時間を設けてもらった。

 イベントでは、闘病経験を持ち、医療の道を志す人たちが思いを語る。

 名古屋大医学部に今春、入学した板倉京平さん(19)、孫思佳(そんしか)さん(20)はいずれも名大小児科病棟で闘病。その後回復し、猛勉強して難関を突破した。信州大医学部の大学院でCAR−T療法の研究をする盛田大介さん(35)も、小児がんの経験者だ。柳田優芽ちゃんの父・隆さん(43)も参加し、研究への思いを語る。

 入場無料。要予約。(問)名古屋小児がん基金事務局=電052(744)2308、電子メール=info@npcf.or.jp

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