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子どもの腕 急に引くとだらり 靱帯ずれて発症「肘内障」

(2017年6月2日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

骨折との見極めには注意

服部義医師

 子どもの手を引っ張ると、突然泣きだして腕がだらり−。そんな経験をした人はいないだろうか。これは「肘内(ちゅうない)障」という小さい子どもによくみられる肘のけが。「子どもの肘は抜けやすい」といわれるが、実は脱臼とはちょっと違う。その対応法などを「あいち小児保健医療総合センター」(愛知県大府市)のセンター長で整形外科が専門の服部義(ただし)医師に聞いた。(諏訪慧)

 名古屋市内の主婦は、現在3歳の長男が10カ月だったころ肘内障になったときのことを振り返る。昼寝から目覚めて突然、泣きだしたが、泣き通しだったわけではなく「寝起きで機嫌が悪いのかな」と思ったという。夜は特別、痛がることもなく、いつも通りに就寝。翌日、仕事が休みだった夫が、長男の腕がだらりと垂れ下がっていることに気づき、病院に連れて行って肘内障と分かった。

 先月も、飲食店ではしゃいでいて「他のお客さんの迷惑になってはいけない」と、つい手首を引っ張ってしまった。再び同じ状態になったが、医療機関を受診し事なきを得たという。

肘内障のイメージ

 腕がだらりとなったとき、関節や骨には何が起きていたのだろうか。まずは、服部医師に腕の構造を教えてもらった。肘から手首にかけては2本の骨がある。気を付けをして姿勢を正したときに前にくるのが橈骨(とうこつ)で、後ろは尺骨。2本の骨は、橈骨を輪っかのように囲む輪状靱帯(じんたい)によってつながっている。肘内障は、急に腕を引っ張られて、輪状靱帯がずれる症状だ。肩より下の腕が動かなくなるので「肩が脱臼した」と勘違いする親もいるという。

 この症状は手を強く引っ張ったときだけでなく、寝ているときも起こる。寝返りを打って腕を巻き込むと、引っ張られたときと同じ作用が働くためのようだ。

 この症状が起こりやすいのは、6歳ごろまで。何度か発症した子も、小学校に入学するころには起きにくくなる。成長すると、橈骨と靱帯がずれにくくなると考えられている。繰り返したとしても骨や関節に異常はなく、後遺症も残りにくいという。

 もちろん整形外科などを受診するのがよいが、「治し方はそれほど難しくないんです」と服部医師は言う。手のひらを上にし、脇を締めて肘を45〜90度曲げた状態で、手のひらを内側に返す。これで治らなければ、そのまま手の甲が上を向いた状態から、今度は手首を逆回りで元に戻すとよいという。靱帯が元通りになれば、すぐに腕を動かせるようになる。「山間地や離島など、近くに医療機関がない人は試してみるのも一つ」と話す。

 ただし注意点がある。骨折との見極めだ。骨折は腫れがあるのに対し、肘内障はない。転んだり、手を突いたりしていれば骨折の疑いがある。服部医師は「本当は骨折なのに肘内障と勘違いして親が治そうとすると、悪化させる恐れがある。肘のあたりの状態や直前の過ごし方で慎重に判断してほしい」と呼び掛ける。

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