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部活動などで歯を折る事故多発

(2017年6月6日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

運動時、マウスガードを 専門家 野球、サッカーでも推奨

完成したマウスガード。使用時は上あごに装着する=東京都葛飾区の宇津宮歯科クリニックで完成したマウスガード。使用時は上あごに装着する=東京都葛飾区の宇津宮歯科クリニックで

 学校の部活動などで相手やボールとぶつかって、歯を打ったり折ったりする事故が後を絶たない。大けがの予防に役立つのが、上あごの歯にかぶせる「マウスガード」だ。安全にプレーできるように、高校ラグビーの公式戦などでは装着が義務付けられている。子どもの競技人口の多い野球やサッカー、バスケットボールでも装着するよう専門家が呼び掛けている。(竹上順子)

 5月初め、東京都立高校ラグビー部の1年生男子4人が、葛飾区の宇津宮(うつのみや)歯科クリニックでマウスガード用の歯型を取った。高校ラグビーでは2006年度から、公式戦での装着を義務化。関東ラグビーフットボール協会メディカル委員会の歯科委員長でもある宇津宮幸正院長は「この時季は毎年、新入部員の分を作っている」と話す。

宇津宮幸正さん宇津宮幸正さん

 マウスガードは型を取って1週間ほどで完成。実際に装着してもらい、微調整してから渡す。同協会には歯科医師の組織があり、依頼者一人一人に合ったものを5千円で製作している。

 マウスガードは主に樹脂製で、外からの衝撃を和らげ、歯が折れるなど大けがを防ぐ。歯で自分の口の中や相手を傷つける事故や、あごの骨や関節の損傷も予防できる。

武田友孝さん武田友孝さん

 東京歯科大スポーツ歯学研究室の武田友孝准教授は「マウスガードには筋力アップの効果もある」。歯をしっかり食いしばれると運動神経の働きが活発になり、筋肉の活動量が上がる。さらに関節の曲げと伸びの筋肉両方の働きが高まるため関節が動きにくくなり、頭部や目線が安定し、体の平衡機能も高まるという。

 「首の筋力もアップし、相手にぶつかられるなどしても頭が大きく振れることが減って、脳振とうを減らす効果もあると考えられている」と武田准教授。

 日本ラクロス協会は本年度から、女子に加え男子にも装着を義務化。対戦相手に不快感を与えかねないなどとして使用を禁じてきた全日本柔道連盟も3月、装着できるルールに改めた。

 口の大けがは学校の運動部活動でも起きている=表。武田准教授は「競技人口も、けがも多い野球やサッカー、バスケなど装着した方がいい競技はまだある。指導者はよく考えてほしい」と呼び掛ける。

 作る際の注意点は何か。武田准教授は「最も重要なのは、かみ合わせ。きちんと調整されていないと効果がないばかりか、1点だけに力がかかって危険な場合もある」と指摘。安価な市販品もあるが、自分で歯の形に合わせる必要があり、調整は難しい。マウスガードを作る際も他の職種ではなく、歯科医師が診ることが望ましい。

 作る年齢について、武田准教授は「中学や高校で新しい種目を始める時にけがをすることが多いようなので、なるべく早く使用してほしい」と話す。装着が義務付けられている種目は、小さなころから使うのが望ましいが「歯の生え替わりなどもあるので、専門医に相談を」と勧める。

 ただマウスガードは保険適用外。宇津宮院長が実施した高校ラグビー部員調査によると、かかりつけ医が作る場合はほぼ5千円。しかし、それ以外だと2万円以上かかったケースもあった。普及には、製作費の補助なども必要だ。

 日本スポーツ歯科医学会は、マウスガード製作のガイドラインをホームページで公開。ここで認定医を探すこともできる。

2015年度に部活動で起きた口のけがの例

部活名       学年・性別 けがの内容

野球部       高2男子  ノックの打球がイレギュラーバウンドして口に当たって出血、前歯2本が折れた

バスケットボール部 高2女子  練習試合で相手選手の頭と激突。上前歯3本が折れた

ラグビー部     高1男子  練習でタックルをしてきた生徒の頭が歯に当たり、上口唇が切れて上前歯3本を負傷

日本スポーツ振興センターの学校事故事例検索データベースより

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