つなごう医療 中日メディカルサイト

貧困・・・受診あきらめないで 「無料低額診療」知ってますか

(2017年6月11日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像無料低額診療を受ける男性(手前)から相談を受ける川合優さん=金沢市の城北病院で

 経済的な理由で、医療費の負担に苦しむ人が増えている。病気になっても病院に行けない「受診控え」で症状が悪化し、死亡する事例も全国で相次ぐ。関係機関は生活困難な人が無料や少ない自己負担で医療を受けられる「無料低額診療事業」を知ってほしいと呼び掛け、社会保障の充実も合わせて求めている。(小室亜希子)

*負担薬だけ

 「食費を切り詰めてやっと生活している」。金沢市の城北病院で、無職男性(66)がため息をついた。

 男性は50歳で糖尿病を発症。54歳の時に長年勤めた繊維会社を人員削減で解雇された。収入は月9万円の年金のみ。国民保険料を月7千円、介護保険料を月1万4千円、公的な貸付制度の返済に月9800円、公共料金などを支払えば手もとに残るのはわずかだ。

 生活保護は基準額を年金収入が若干上回り受給できなかった。月1万円の医療費負担にあえいでいた時、病院内の張り紙で無料低額診療を知り申請。診察代は無料になり、院外処方される2カ月分の薬代4千円だけ負担する。それでもちゃんと支払えるか不安で、受診日は年金支給日の後と決めている。

 厚生労働省によると、無料低額診療の利用者数は2008年度の延べ572万人から15年度は777万人に増加。08年のリーマン・ショック後に生活苦の人が増えたのが一因とみられる。だが同病院ソーシャルワーカーの川合優さん(35)は「無料低額診療で助けられた命は氷山の一角」と指摘。背後に多くの受診控えがあるとみる。

*手遅れ58例

 石川県民主医療機関連合会の調べでは、受診が遅れて死に至った事例が16年は県内で2件あった。いずれもがんの60代と70代の男性で、国民保険料が払えずに無保険だったり、窓口での自己負担に不安があったりして受診を控え、手遅れになった。全国では58事例あった。

 川合さんによると、患者本人や家族が無料低額診療を知っていたケースはまれといい、制度をもっと広める必要性を指摘。さらに「患者の多くはさまざまな境遇の中で懸命に生きてきた。貧困を個人の問題で済ませられない」と実感を込め、「誰もが医療を受ける権利を保障されているという視点に立ち、国は社会保障をよりよく充実させるべきだ」と訴える。

 無料低額診療事業 社会福祉法に基づき1951年に始まった。生活困難者に対し、無料または低額料金で診療を行う。基準は各法人で決定。法人は一定数の患者の医療費を減免することで、税制上の優遇措置を受けられる。2015年度は全国で647の医療機関が実施。院外処方された薬代には適用されない。

保険料負担の変更も一案

 横山寿一金沢大名誉教授(社会保障論)の話 国民皆保険の制度がありながら、保険料の滞納により保険証が渡されないなど、実質的に制度から排除される人が増えている。無料低額診療を活用する方法はさしあたっての問題解決にはなるが、根本的に国の社会保障制度を変えていかなければならない。負担能力に応じた形に保険料や窓口負担の割合を変えるのも一つ。改めて国民皆保険とは何で、どう改善を図るべきなのか、真っ正面から議論する必要がある。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人