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認知症でも幸せに暮らす 国立長寿医療研究センター(愛知県大府市) 大沢愛子さん

医人伝

(2017年6月13日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

国立長寿医療研究センター(愛知県大府市) リハビリテーション科医長 大沢愛子さん(41)

画像教室の参加者に近況を聞き、助言する大沢愛子さん

 「どこの山で撮ったんですか?」「仲がいいですね」。認知リハビリテーション(リハ)の教室で、ほがらかな声で語り掛ける。参加した認知症患者と家族20人ほどの雰囲気が和らぎ、患者らが持ち寄った昔の写真の話にいっそう花が咲いた。

 「患者が輝いていた時や大事にしていたことを話し、思い出を記す『回想法』も脳の刺激になる」。週一度の教室では、計算と運動を組み合わせた療法などを試みる。患者の能力を保つことが目的だ。作業療法士らと参加者のささいなしぐさややりとりを見て話も聞く。「家族の間で隔たりがあったり、表情が硬くなったりすることもある。不安や悩みを吐き出し、次週の教室までおだやかに過ごせるようにしてあげたい」

 大阪府泉佐野市出身。2002年に和歌山県立医科大を卒業し、「人格を成り立たせる要素を探りたい」と、当初は脳外科を志望。同大病院のリハ科で研修した時、指導医が、脳卒中で半身まひとなり入院した60代男性にかけた一言が転機になった。「一生懸命、リハすれば、1カ月以内に歩いて帰してあげるからね」。男性は寝たきりになると思っていただけに、意外な言葉だった。男性はリハを続け1カ月後に歩いて退院。「先がないように見えても、そこから社会に復帰させる医学がある」。体に電気を当てたりもんだりするだけのイメージだったリハへの認識も一変した。

 埼玉医科大などを経て、13年に国立長寿医療研究センターに移ってからは、認知症の人のリハに注力する。患者のリハ計画を立てる時に欠かせないのは、その人の人生を知ること。認知症の患者は徘徊(はいかい)したり暴言を吐いたりすることもあるが「過去に活躍していたころの自分に戻っていることもある。その人を知って症状を見直せば、落ち着いて対応できる。その場しのぎでは効果がない」。

 患者の人生に基づく医療を確立させるための研究も進める。「まだ偏見があるため、認知症の患者や家族は誰にも相談できず、孤立しやすい。病気になっても、幸せに暮らし続けるには何が必要か」。患者や家族の困りごとを拾うように問診するため、カルテを書くのは診察後。「パソコンを見ていると、大事なことを見逃しちゃうから」。自らに課した問いかけへの答えを教わるつもりで、患者と家族に向き合う。(出口有紀)

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