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2度目の衝撃 高い危険性 脳振とう後の数週間

(2017年6月20日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像柔道の投げ技による頭部外傷で寝たきりになった北川大輔さんと父親の広隆さん(右)=横浜市で

 スポーツを楽しむ際に注意しなくてはならない頭部外傷。頭を打ったり脳が急激に揺さぶられたりするなどの衝撃が加わって起きる「脳振とう」は、一時的な意識消失のイメージが強いが、2度目の衝撃が加わることで重い後遺症や死を招くことがある。だが、危険性は知られておらず、スポーツ事故の被害者家族や医師らが警鐘を鳴らしている。(細川暁子)

 横浜市の北川大輔さん(24)は高校入学直後の2008年5月、柔道部の練習中に部員から投げ技をかけられた直後に倒れ込んでけいれんし、意識を失った。頭蓋骨と脳の間で出血する急性硬膜下血腫の診断で開頭手術を受けたが意識は戻らず、現在も寝たきりで意思疎通ができない。

 大輔さんは事故の約2週間前の4月中旬にも練習中に投げ技をかけられて頭痛と吐き気を訴え、脳神経外科を受診。脳振とうと診断され顧問にも診察結果を伝えていた。意識を失った当日も頭痛があり、本人は見学のつもりで部活に参加。だが「人数が足りない」という理由で練習に加わるよう促された結果、事故は起きた。

 父親の広隆さん(61)が学校側に損害賠償を求めた訴訟の判決では、「脳振とうを知っていた顧問は練習に参加させないようにするなど安全を確保すべきだった」などと広隆さんの主張が認められて勝訴。広隆さんは「脳振とうが引き金となって障害が残ることがある。怖さを知ってほしい」と訴える。

硬膜下血腫など 致命傷の恐れ

脳震とうの主な症状

 日本体育協会(日本体協)公認スポーツドクターで、「のじ脳神経外科・しびれクリニック」(神奈川県厚木市)院長の野地雅人医師によると、脳振とうは頭部への衝撃で起きる一時的な脳機能障害。意識消失や頭痛、吐き気、耳鳴りなどの症状が出る。柔道やラグビーなど選手同士の接触を伴い頭部を打つことが多いスポーツで多発。頭を強打しなくても、柔道の投げ技などで脳が急激に揺さぶられることでも起きる。

 症状は通常、安静にしていれば数時間から数日以内に消えるが、数週間にわたって継続することがある。怖いのが「セカンドインパクト症候群」だ。脳振とうの症状が出た数日から数週間後に、脳が完全に回復しない状態で2度目の衝撃が加わると、脳がむくんで急性硬膜下血腫などの致命傷を招くことがある。致死率は30〜50%ともいわれ、大輔さんもセカンドインパクト症候群だったとみられる。脳振とうを繰り返すと、記憶力や注意力が低下する「高次脳機能障害」も懸念される。

 命に関わることもある脳振とう。頭痛や、めまい、ふらつき、物が二重に見えるなどの症状が続けば早めに脳神経外科でコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)検査を受けた上で、頭痛などの症状が完全に消えるまでスポーツは休ませることが重要だ。

 ただ、野地医師は、脳振とうは一時的な意識消失やすぐに回復するというイメージが強く、スポーツ指導者や医師でさえも甘く見る風潮があると指摘。先月には、長野県松本市で開かれた「青少年スポーツ安全推進協議会」のシンポジウムでも講演し「脳振とうの後、すぐに選手を試合や練習に復帰させるのは危険。十分に経過観察を」と強調した。

 野地医師も関わる「日本臨床スポーツ医学会脳神経外科部会」は頭を強く打った際などの対処方法「頭部外傷10か条の提言」をホームページで公開。脳振とうの症状や注意点を詳しく解説している。

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