つなごう医療 中日メディカルサイト

アルツハイマー創薬へ前進 富大グループ 生薬で記憶改善 作用の成分特定

(2017年6月20日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

 アルツハイマー病の記憶障害を改善する薬物や仕組みを見つけ出す新たな方法によって、生薬の「骨砕補(こつさいほ)エキス」に含まれる有効成分が、脳内の神経細胞に作用して記憶が改善することを富山大の研究グループが突き止めた。来年度、記憶向上作用があるサプリメントを開発して臨床実験に乗り出す予定で、創薬につながる成果を目指す考えだ。(山中正義)

 グループは、同大和漢医薬学総合研究所神経機能学分野の東田千尋教授(50)と久保山友晴助教(39)、博士課程4年楊志友(ヤンジーヨー)さん(28)の3人。成果は19日、スイスの科学誌「フロンティアズ・イン・ファーマコロジー」に掲載された。

 骨砕補はアルツハイマー病の記憶改善への効果が分かっていたが、骨砕補を構成する多くの化合物のうち何が作用するのか不明だった。東田教授は「確立した方法論は神経の病気にかかわらず、汎用(はんよう)性がある。多くの研究者に、薬剤の作用メカニズムを明らかにする一つのきっかけにしてもらいたい」と話している。

 新たな方法は、服用剤を前提にアルツハイマー病のモデルマウスの口から骨砕補を投与。微量の成分を検出する「質量解析法」で脳内を分析し、作用する骨砕補の化合物特定を試みた。化合物が作用するタンパク質を見つけるため、タンパク質を分解する酵素を使った細胞実験を応用した。

 その結果、「ナリンジン」という成分が体内の代謝を経て化合物「ナリンゲニン」と「ナリンゲニングルクロン酸抱合体」に変化して脳内に出現。これらが、情報伝達を担う神経細胞の突起「軸索」の形成に関わるタンパク質「クリンプ2(CRMP2)」とそれぞれ結合し、アルツハイマー病によってリン酸化が進み、機能が抑制されていたCRMP2からリンが除去され、軸索の働きが回復して記憶が改善した。

 従来は体外で細胞実験を繰り返し、作用する化合物を見つけようとしたが、体内の代謝を無視しており、精度面で課題があった。 

 骨砕補 和名ハカマウラボシという植物の根茎を乾燥させた生薬。打撲や骨折したときに飲むと効果があるとされ、中国で伝統的に用いられている。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人