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魚介類によるアニサキス症 「冷凍」「加熱」で食中毒防止

(2017年6月27日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

生食 内臓取り除き、身部分を確認

画像魚の切り身に付いていたアニサキス(円内)=伊藤誠客員教授提供

 魚介類に寄生しているアニサキスによる食中毒が注目されている。芸能人による体験談などが話題を呼び、市場では5月以降、アジやカツオなどの魚価が下落した。流通システムの発達で魚介類を新鮮なまま運べるようになり、以前では起こらなかった魚種でも発生しているが、急増しているわけではなさそうだ。刺し身など魚介類を生食する日本の食文化では、アニサキスによる食中毒の可能性をゼロにすることはできないため、正しい知識を得たい。(稲田雅文)

 アニサキスは、サバやイワシ、カツオ、サケ、イカ、アジなどの魚介類に付く寄生虫。幼虫は長さ2〜3センチ、幅0.5〜1ミリほどで白い糸に見える。主に内臓に寄生しているが、魚介類が死ぬと筋肉に移動する。

 寄生した魚介類を生で食べ、アニサキスが胃壁などの消化管に食い込んで激しい腹痛を起こすのがアニサキス症だ。発症までの時間は、魚介類の生食後1時間から2週間と幅がある。

 「サンマなど以前は刺し身で食べなかったもので新たに食中毒が起きている面もあるが、患者が急増しているとは考えにくい」と話すのは、愛知医科大(愛知県長久手市)客員教授の伊藤誠さん(寄生虫学)。厚生労働省によると、2016年のアニサキス中毒の届け出患者数は、126人。07年の6人から大幅に増加したが、13年からアニサキスの食中毒の届け出が義務化されたことが背景にあるとみられる。

 国立感染症研究所は、病院が診療報酬の請求に使う明細書のデータ約33万件を分析。実際には全国で年間約7千人の患者がいるとの推計値を出している。

 「痛みにはアレルギー反応も関係しているとみられ、症状は人によって違う。同じようにアニサキスが寄生した魚介類を生で食べても痛みが出ず、気分が悪くなるといった症状で済む人もいる」と伊藤さん。

 治療方法は、内視鏡でアニサキスを摘出することで、除去するとすぐに痛みが治まることが多い。アニサキスによって死亡した事例は報告されていない。

 同じ種類の魚でも、産地によってアニサキスが多く寄生していたり、ほとんど寄生していなかったりする。本来は、イルカや鯨、アザラシなどの海産哺乳類に寄生するため、これらの生物の生息状況も関係しているとみられる。

 根本的な予防は、加熱か冷凍をしてから食べることだ。アニサキスは、60度で1分、70度以上では瞬時に死滅する。冷凍の場合は、マイナス20度で24時間以上冷やせば感染の恐れはなくなるという。

 伊藤さんの過去の実験では、マイナス15度でも24時間で死滅した。「最近の家庭用冷蔵庫で24時間凍らせれば、まず大丈夫。大切なのは中心まで凍らせること」と話す。

 刺し身などで生食をする場合は、新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除く。身の部分を確認して、アニサキスがついている場合は除去する。

 シメサバが原因のアニサキス食中毒も多い。一般的な食酢に漬けるだけでは予防にはならない。しょうゆやわさびを付けても、死ぬことはないという。

 伊藤さんは「冷凍技術が進歩し、味が落ちにくくなった。刺し身で食べる場合も一度、冷凍した後に食べるようにすれば、アニサキスによる食中毒は激減する可能性が高い」と話している。

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