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被災地 乳がん受診遅れ 親に治療促す若い世代流出

(2017年7月2日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

 東日本大震災の被災地・福島県南相馬市と周辺部で、乳がんのしこり、痛みなどを自覚しながら医療機関の受診が遅れた患者の割合が震災以降、大幅に高くなっていることを、南相馬市立総合病院外科の尾崎章彦医師(32)らが英国の医学誌「BMC Cancer」で発表した。原発事故の影響で若い世代が流出し、中高年の親に治療を促す家族力が低下したことが影響しているとみられる。(編集委員・安藤明夫)

 尾崎医師は、同病院と、同市内にあった旧・渡辺病院(現・渡辺クリニック)で、2005年から16年に乳がんで治療を受けた患者計219人(震災前122人、震災後97人)を調査した。症状の自覚から初回受診までの期間を比較したところ、3カ月以上の受診遅れがあった人は、震災前の18.0%から29.9%に増加。このうち1年以上の遅れがあった人は、4.1%から18.6%と四倍以上に達した。震災の混乱が収まった14年以降も高い水準が続いている。

 また、震災後に受診遅れがあった患者の家族構成を調べると子どもとの同居率は37.9%、うち1年以上の遅れの人は22.2%で、受診遅れのない患者の51.5%を大きく下回った。

 同市などの福島県沿岸部は3世代同居の大家族が多かったが、震災以降、避難指示区域以外でも若年人口が大幅に減少している。

 尾崎医師は14年に同病院に赴任したばかりのころ、症状を自覚しながら3年以上も受診しなかった独り暮らしの患者(59)に出会ったことをきっかけに、震災との関連について調査を始めた。

 「この地区は比較的高齢の乳がん患者が多く、受診を促すのは、夫より子どもが中心。震災後の家族の分離が影響していると感じる。保健行政に協力を求め、受診を呼びかけていきたい。他の被災地でも起きる可能性があり、注意が必要だ」と話す。

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