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<マナビバ・知るコレ!〉 たばこの害

(2017年7月2日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

病気の危険性高まる

 他人のたばこの煙を吸わされる「受動喫煙)」。その対策を強化するよう法律を改める議論を、国会議員が行いました。でも、うまく調整がつかず、先月終わった国会に改正案を提出できませんでした。たばこの煙は、なぜ体に悪いのでしょうか?(佐橋大)

がん発生率上げ血管も傷める

たばこを吸うと

 たばこの煙には、がんを引き起こす物質が多く含まれています。そうした物質が肺に入ると、肺やのど、食道などでのがんの発生率を引き上げます。国立がん研究センターによると、肺がんになる確率は、たばこを吸う男性では、吸わない男性の4・5倍です。有害な物質は、たばこから立ち上る煙「副流煙」にも多く含まれるので、周囲の人の健康も損ねます。

 それだけではありません。「たばこの煙は、血管にもダメージを与えます」と、あいち健康の森健康科学総合センター(愛知県東浦町)のセンター長で医師の津下一代さんは話します。

 煙に含まれる一酸化炭素(CO)は、血管の中で酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンとくっつき、その働きを鈍らせ体中に酸素が行き渡るのを妨げます。すると、酸素を多く必要とする激しい運動や長時間の運動がしにくくなります。体内の酸素が不足しがちになると、脳から「赤血球を増やせ」という指令が出て、赤血球が増えます。このため、血液の粘りけが増し、細かい血管が詰まりやすくなります。

 さらに、煙の中にある興奮物質ニコチンが作用して、心臓の動きが早くなり、血管を縮ませ、血圧が上がります。

 人は意識をしていませんが、心臓がどくんどくんと血を送り出すたびに、血管の内側には大きな圧力がかかっていて、血管はだんだん傷んできます。血管には、自らを修復し、しなやかに保つ機能がありますが、たばこには、この働きを悪くする活性酸素という物質も含まれています。傷んだ血管に、どろどろの血が流れ、さらに高い圧力がかかる。血管が詰まり、壊れやすい条件が重なります。「その結果、心筋梗塞や脳卒中など、血管の病気が起きやすくなります」と津下さんは説明します。

ニコチンが生む依存の悪循環

たばこをやめにくい仕組み

 「体に悪い」と分かっていても、たばこをなかなかやめられないのは理由があります。たばこには依存性があるのです。

 「子どもをタバコから守る会・愛知」世話人で医師の磯村毅さんによると、ニコチンは、体の中に入ると、脳内物質ドーパミンを無理やり出させます。ドーパミンは、食事で満腹になったときに出るなど、脳が幸せや安らぎを感じることに関わっています。

 大抵、たばこを初めて吸うときは、刺激が強すぎて気持ち悪くなり「いつでもやめられる」と思うといいます。それがくせもの。たばこを吸い続けていると、ドーパミンが自力で出せなくなり、たばこを吸っている瞬間にだけ、ドーパミンが出る脳に変化します。たばこを吸っているときだけ安らぎを感じ、おいしい食べ物を見ても、ドーパミンが以前ほど出ないようになります。吸うのをやめて体内のニコチンが切れると、寂しさや落ちつかなさを感じ、ドーパミンを出そうと再びたばこを吸いたくなる悪循環に陥るのです。たばこ以外のことに幸せを感じにくくなっているのに、それには気付きません。

画像生徒たちに、たばこの害について語る磯村さん=名古屋市内の中学校で

 「人間には、もともとストレスに対応する仕組みがあるのに、たばこはその働きを弱めます」と磯村さん。子どもをたばこから守るため、各地の学校を回り、その危険性を伝えています。

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