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通院嫌い 薬だけ求める糖尿病患者 月1回診察でリスク管理 合併症防ぐため生活指導

ホンネ外来

(2017年7月4日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像患者の血圧を測る岡田源義院長(右)=名古屋市緑区で

 読者からの投稿に基づいて取材し、よりよい医療の実現を考える「ホンネ外来 発」。定期健康診断の診察に続き、今回は950万人がかかっているとされる糖尿病を取り上げる。「総合病院から転院してくる患者さんの多くは『診察はいらない、薬は3カ月分出せ』と言います。しかしこれでは基本的な生活習慣の指導ができません」。ベテラン医師の訴えをきっかけに、治療の現状と患者らの認識を探った。(小中寿美)

 投稿したのは、病院勤務を経て開業し、20年目を迎えた岡田内科クリニック(名古屋市緑区)の岡田源義(もとよし)院長(60)。糖尿病の専門医で、患者には月1回、通院するよう指導している。診察に加え、血糖値や血圧、体重を自ら測定して症状を把握。手書きのカルテには発症した時の状況や家族構成、間食の習慣などの記載がびっしり。すべて患者との会話から得た情報だ。

 区内の男性(60)は、甘い飲み物が異様にほしくなり、かかりつけ医で糖尿病が発覚して同院を紹介された。2年前に極めて高かった血糖値は、通院と服薬を続けて落ち着いている。ただ診察では「体重を落としましょうね」などと指導される。「言われなければ食事に気を付けなくなってしまう。通院が自分の中で戒めになっている」と話す。

 食事療法と運動療法は糖尿病治療の基本だ。生活習慣に気を付けることが病気の進行を遅らせたり、合併症を予防したりすることにつながる。

 だが、総合病院から転院してきた患者の多くは月1回の通院に反発し、来院した際には数カ月分の薬を要求するという。理由は「来るのが面倒だから」「忙しいから」。「まるで風邪薬を薬局に買いに来る感覚だ」(岡田院長)。総合病院では、状態が比較的軽い患者の場合、2〜3カ月に1回の通院を認めるケースは珍しくないため、転院していきなり月1回の通院を求められることに、戸惑いを感じているとみられる。

 それには総合病院なりの事情もある。「月1回の診察が理想だが、勤務医時代はできなかった」。同じく糖尿病専門医で、6年前に開業した糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI(同市天白区)の戸崎貴博院長(46)は明かす。「総合病院ではただでさえ患者が多い上に、重症患者がどんどん来院する。その対応に追われているので、2、3カ月に1回の診察でないと回っていかない」。患者数の増加に医療現場が追いついていない現状を指摘した。

 さらに理由はもう一つ。入院設備が整い、複数の医師が待機する総合病院では、患者の症状が悪化しても迅速に対応できるが、個人医院では難しい。「個人医院では、すべての責任は医師個人にかかってくる。指導がきめ細かくなるのは当然」と話した。

 ただ、岡田院長が月1回の通院にこだわるのは、糖尿病が患者の生活や命にかかわる合併症を起こすリスクをはらむためでもある。最悪の場合失明に至る糖尿病網膜症、足を切断しなければならないこともある足壊疽(えそ)−。通院をやめた後、脳に障害を来し半身不随になった40代の男性もいた。病に潜む危険や生活習慣の改善に役立つ知識を伝えるため、開業以来毎月、教室も開いている。

 気になり始めた記者が健診結果を見直すと、過去1〜2カ月の血糖値の状態が分かるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)値は「5・7%」。予備群の数値(6・0%以上)に及ばず内心ほっとしたが、戸崎院長は見透かすように「値はおおよそ毎年0・1ポイントずつ上がっていく。気を付けないとすぐ予備群」。厳しい言葉が返ってきた。

心筋梗塞、脳梗塞も

糖尿病の最新データ

 糖尿病の怖いところは、血糖値が高いだけでは何の痛みも出ず、自覚がないまま病状が進んでしまうことだ。合併症には、死に直結する心筋梗塞や脳梗塞も含まれているが、広くは知られていない。厚生労働省研究班が3月に発表した調査では、糖尿病がそうした病気の「危険因子」と知っている人は、成人の半数に満たなかった。

 2010年に行った国民健康・栄養調査の参加者のうち、2891人に「心筋梗塞または脳卒中の原因として正しいと思うもの」を選択してもらったところ、高血圧は86%の人が選んだのに対し、糖尿病は45%だった。

 研究班長で、滋賀医科大アジア疫学研究センターの三浦克之センター長は「糖尿病は健診が病気を知る大きな手掛かりになるが、受けない人も多い。健診でなぜ測定するかも含め、糖尿病の正しい知識を広く知らせる必要がある」と話す。

 健診を受けた人は結果を見よう。国際標準のHbA1c値(NGSP値)で「6.5%以上」なら有病者、「6.0%以上6.5%未満」なら予備群の一人として数えられている。これに加え、戸崎院長は「5.6%以上は時々血糖値が高い『境界型糖尿病』にあたる」。食事療法を始め、検査を年1回は受けるよう勧めている。

 糖尿病 膵臓(すいぞう)から出るホルモン「インスリン」の分泌が不足したり、正常に働かなかったりして血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上がる病気。高い状態が続くと全身の血管に影響し、両脚のしびれなどの糖尿病神経障害、週約3回の人工透析なしでは生きられない糖尿病腎症などの合併症を引き起こす。原因により4タイプがあるが、遺伝や過食、運動不足などが影響する「2型糖尿病」が圧倒的に多く、生活習慣病とされているのは2型。

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