つなごう医療 中日メディカルサイト

尾鷲の医療 改革必須

(2017年7月9日) 【中日新聞】【朝刊】【三重】 この記事を印刷する

赤字、医師高齢化 課題山積み

画像尾鷲総合病院院長 小藪助成さん

 6月にあった尾鷲市長選で、市立の尾鷲総合病院の再生は立候補者2人の共通した訴えの1つとなった。同病院の患者数は減少傾向にあり、累積赤字は27億円超。がん治療に有効な放射線治療装置(リニアック)は故障したまま1年以上が過ぎ、更新を望む市民の声も大きい。小藪助成院長(52)に病院運営の現状や展望を尋ねた。(聞き手・小坂亮太)

 −地域における役割は。

 一番は救急。(治療が必要だが命の危険性は低い)一次、二次救急の24時間対応を続けている。尾鷲は既に後期高齢者が前期高齢者を上回るほど高齢化が進んだ地域。歩行困難なお年寄りが発熱などで搬送され、入院には至らない症状でも一晩受け入れることがある。もし夜間の態勢がなくなり、伊勢や松阪の病院に運ばれて軽症だった場合、同じようにはいかない。患者さんの負担軽減、(緊急性の高い)三次救急を担う市外の病院のためにも重要な役割だ。

 −常勤医師は現在、最大時の半分の14人。

 数だけでなく、半分が50歳以上という年齢層も大きな問題。当直業務は年齢とともに難しくなる。50歳以上はしない病院が多いが、ここは60歳まで当直に入るという特異な状況にある。今いる医師も10年たてば多くが現場を去る。病院の医師不足が注目されがちだが、人口減で患者が減れば開業医も苦しくなる。非常勤で協力を得ている紀北医師会の医師も減るだろう。そうなれば在宅医療の担い手の問題にもつながる。新規開業は考えづらいが、若い力を確保し、三次救急に適切につなぐための体制を維持したい。

 −リニアックについて。

 予算化から設置までには2年ほどはかかる。できるだけ多くの患者が恩恵を受けるためにも、可否の決断は速いほうが良い。ただ、更新した場合のメリットがどの程度あるのか、がん治療をどこまでやるのかという近隣病院との機能分担についても考える必要がある。

 −運営の展望を。

 一次、二次救急と、糖尿病やがんなど慢性疾患への対応を保つのが大事だが、医院や診療所が減れば、総合病院の重要性はより大きくなる。患者増が考えづらい中、同じ入院数でも病床の機能を差別化するなどして医業収益を上げる体系も必要。医療圏人口だけを見れば、今後は紀南病院(御浜町)との統合を検討することもあるかもしれない。

 10年、15年後の医療はどうするべきなのか。維持にとらわれず、県の地域医療構想に基づく(病気が治癒に向かっている)回復期の病床やリハビリの充実、在宅の問題も含め、厳しい現状から目を背けず、新たな仕組み作りの検討を進めていかなければいけない。

 こやぶ・すけなり 松阪市出身。三重大医学部を卒業後、同大第一内科などを経て1996年から尾鷲総合病院で勤務。循環器医長、透析センター部長などを歴任し、2016年4月から院長を務める。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人