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「茶・茶・茶運動」効く

(2017年7月10日) 【中日新聞】【朝刊】【滋賀】 この記事を印刷する

小中生のむし歯激減させた歯科医師 小島宏司さん(54)

画像歯科医師 小島宏司さん

 むし歯は「食生活習慣病」−。竜王町の歯科医師として「竜王茶・茶・茶運動」を唱える。飲み物にお茶を薦める町ぐるみの取り組みで、永久歯がほぼ生え替わる小中学生のむし歯の数を劇的に減らした。県内2位の「むし歯の多い町」を、わずか10年で「むし歯のない町」に変貌させた。(成田嵩憲)

 町国民健康保険診療所(歯科)に就いた1995年、毎日むし歯治療に明け暮れていた。待合室にいるのは、ほとんどが子ども。翌年、妻が長女を出産したこともあり、人ごとに思えなかった。

 「歯磨きはちゃんとさせているのに」。保護者の嘆息に耳を疑った。「それがそもそも誤った知識。甘い物をだらだらと食べるとむし歯になることを知らないのでは」。啓発が必要だと思い立った。

 そこで考え出したのが「茶・茶・茶運動」。のどが渇いた時にお茶を飲む習慣を付けてもらうのが狙いだ。糖分たっぷりの清涼飲料水と違い、お茶にはむし歯予防に効果的なフッ素が含まれている。

 ただ、一人で言うだけでは広まらない。町役場に何度も出向き、学校や老人会などでお茶の効用を説くと、周囲の理解は早かった。2002年には町が広報誌で茶・茶・茶運動を伝えると、町民からは「チャチャチャね」と町ぐるみの運動になった。

 また、これに先立ち、すでに守山市が実践していたフッ素液で口をゆすぐ「フッ素うがい」も提案。町も2000年度に事業化した。町内全ての幼稚園と小中学校で2つの取り組みを導入すると、むし歯の数が減少し05年度には県内で最も「むし歯のない町」になった。

 一人当たりのむし歯の数を調べた県の15年度のまとめでは、竜王町は小学6年が0.09本、中学3年が0.22本。県平均の6分の1、全国平均の7分の1程度だ。最近は竜王町を手本に、フッ素うがいを導入する市町が増えてきた。

 だが課題もある。中学を卒業し、フッ素うがいの日課も“卒業”した若者に、むし歯が増えつつあるということだ。「保護者が清涼飲料水を飲まさない他律(他人任せ)ではなく、子どもたち自身の自律が必要だ」と、さらに声を上げる。

 近年は、80歳になっても自分の歯を20本以上保つ目標を掲げた「8020運動」が盛んに叫ばれる。「茶・茶・茶運動が若い世代に受け継がれていけば、みんなが8020運動を達成できる」。自信たっぷりに語った。

 こじま・ひろし 1962(昭和37)年10月、八日市市(現東近江市)生まれ。95年、大津市民病院から竜王町国民健康保険診療所(歯科)の所長に着任。同町出身で元中日ドラゴンズの中川裕貴選手(現球団職員)も幼い頃、利用した。高校野球観戦が趣味で、母校の彦根東を応援する。

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