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死亡診断 遠くからでも 端末通じ看護師が医師に報告 「自宅で最期を」支える

(2017年7月13日) 【中日新聞】【夕刊】【その他】 この記事を印刷する

規制緩和で9月にも

遠隔での死亡診断手順のイメージ

 自宅や介護施設で患者が亡くなった際の死亡診断を、遠隔地にいる医師が看護師を通じてできるように、厚生労働省が月内にも規制を緩和する。準備期間を経て、9月以降に新制度が始まる見通し。「最期まで自宅で過ごしたい」と考える人は多い。高齢化で多くのお年寄りが亡くなる「多死社会」を迎える中、在宅でのみとりを後押しする。

 患者が病気などで自宅で亡くなった場合、火葬に必要な死亡診断書の交付を受けるには、医師法で医師の診断を義務付けている。

 医師がすぐに訪問できない山間部や離島、かかりつけ医が夜勤などで直ちに持ち場を離れられない場合、長時間自宅に留め置かれたりする。亡くなる直前に医療機関に搬送されるケースもあり、最期まで自宅で過ごしたいと願う患者、自宅でみとりたい家族の不安要因になっている。

 新制度では、医師が遠隔地にいても、日ごろから患者の訪問看護を担当する看護師が患者宅で心停止や呼吸停止、虐待が疑われる外傷の有無など体の状況を観察。タブレット端末のような情報通信技術(ICT)機器を活用して画像やデータを医師に報告し、医師はそれを基に死亡診断をする。医師は死亡確認後、遺族にテレビ電話などで状況を説明、看護師に死亡診断書の代筆を指示する。

 遠隔死亡診断を認める前提として、患者の死期が近い▽終末期の対応を医師と看護師が事前に十分連携しており患者や家族の同意がある▽医師がすぐに訪問できないことが想定できる▽看護師が医師の判断に必要な情報を報告できる−などを条件にする。

 看護師が遠隔死亡診断を担当するには、5年以上の勤務実績に加え、3年以上の訪問看護の経験などが必要。早ければ9月ごろ、希望する看護師に患者の状況把握に必要な法医学分野の研修を実施し、研修後すぐに現場で活動を始める。

 遠隔死亡診断は「最期まで自宅で」との患者や家族の思いを支えるものだ。厚生労働省によると、高齢化で年間死亡者数は2015年の129万人から、ピークとなる39年には167万人に増え「多死社会」を迎える。現在、その約8割が病院で亡くなっており、このままでは医療機関の対応も限界に達する。

 一方で、内閣府調査では自宅で最期を迎えたいと考える人は5割を超える。在宅でのみとりを支える体制整備は喫緊の課題だ。

 政府は昨年6月、地域でのみとりを円滑に進めるため、遠隔死亡診断ができる対策を盛り込んだ規制改革実施計画を閣議決定した。

 ただ、死亡診断に際しては、虐待などによる異状死かどうかの判断は高度な専門性が必要で人材育成が欠かせない。ICTの活用は患者の機微に触れるデータを扱うため、情報管理も慎重さが求められる。なにより診断を委ねる医師と看護師が患者や家族から信頼されていないと広がらない。厚労省は今後、実施された全ケースを検証し成果や問題点を洗い出す。

 同省の担当者は「異状死を見逃すと取り組みへの機運が一気にしぼむので、しっかり検証したい。遠隔死亡診断が定着していけば、都市部も含め全体のみとりの支えになる」と話す。(政治部・鈴木穣)

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