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医師主導の治験で存在感 国立名古屋医療センター

(2017年8月1日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

豊富なデータ強み 臨床研究に貢献

画像堀部敬三・臨床研究センター長

 国が「研究立国」を目指す中、名古屋市中区の国立病院機構(NHO)名古屋医療センター(直江知樹院長)が異色の研究機関として存在感を強めている。小児血液がんなどの分野の豊富なデータベースを生かし、全国のNHOグループの病院と協力して、医師主導の治験と臨床研究を支援している。(編集委員・安藤明夫)

 名古屋医療センターの旧病棟を改装した4階建ての臨床研究センター。有期雇用の研究員なども含めると、約100人が所属する。2013年に国の臨床研究中核病院整備事業の対象に選ばれ、5年計画で約20億円の国費をかけ整備が進められてきた。

 事業は「基礎研究は強いが、実用化の力が弱い」とされてきた日本の基盤を強め、新薬や医療機器の開発、難病の新規治療などにつなげることが目的で、大学病院や、がんセンターなどの研究機関が主な対象。名古屋医療センターが選ばれた背景には、臨床研究センター長の堀部敬三さん(64)らが、白血病などの小児がん分野で蓄積してきた豊富なデータがある。

 名古屋大など小児がんにかかわる多くの医療機関と共に臨床研究を進める中で集めたデータを土台に、03年にデータセンターを設立。治験や臨床研究のデータなどを管理し、新薬の承認申請に使える水準のデータを提供できる仕組みを整えてきた。

画像端末がずらりと並ぶ臨床研究センターの治験支援部門=国立病院機構名古屋医療センターで

 「疫学、統計学などの専門家が管理にかかわり、信頼性を維持しています。日本だけでは臨床試験ができるだけの患者数がいない疾患にも対応するため、台湾、シンガポール、香港などの病院と協働する枠組みもできつつあります」と堀部さん。

 NHOの全国143病院は、計5万床の規模があり、医師主導の治験を進めるうえで、患者の選定などにネットワークの力は大きい。もともと、民間病院が引き受けない難病やエイズなどの治療を長く手掛けてきたところも多く、均等な治験などを進めるうえでも利点があるという。

 現在は、肺がんの分子標的薬(細胞の表面のタンパク質や遺伝子を標的に効率よく攻撃する薬)アレセンサが特定のリンパ腫に効くことを証明する治験が進められている。患者数が少ない疾患の場合、治験は手間と費用が膨大なため製薬会社が主導することはないが、医師主導の治験が行われることで、製薬会社は現場の研究を低コストで実用化できるメリットがある。

 成人のリンパ腫の一部に承認されている分子標的薬アドセトリスが、小児患者にも安全に使用できることを確かめる治験も、ゴール間近。難治性の急性白血病の分野でも、他の疾患で承認された薬の適用拡大を目指す治験が進んでいるという。

 新たに取り組んでいるのは、ゲノム(全遺伝情報)を実際の診察に生かす方法を模索する研究。昨年度、日本医療研究開発機構(AMED)の「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」に応募し、がん領域で国立がん研究センター、東京大、京都大とともに採択された。

 これまでのゲノム研究では、がん、糖尿病など多くの疾患の発症や薬剤の効き目と遺伝子多型(DNAの配列の個体差)の関連が実証され、新薬開発につながるなど、大きな成果を上げている。ただ、ゲノム解析に使うデータベースは欧米に頼っているのが現状という。

 堀部さんは「欧米人との違いもあるため、日本人独自のデータベースづくりが国家プロジェクトとして進められている。一方で、ゲノム解析により患者さんの体質にかかわる情報が見つかった場合には、医学的な対応だけではなく、社会的、倫理的な課題もあるので、早急に法的な整備を進めてほしい」と話す。

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