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子宮移植 八事日赤が検討 生体間 院内にチーム設置

(2017年8月2日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

倫理面で課題も

 国内で例のない子宮の生体移植手術の実施に向け、名古屋第二赤十字病院(八事日赤、名古屋市昭和区)が院内にプロジェクトチーム(PT)を設置したことが分かった。子宮移植を巡るPT設置は、国内で慶応大に続き2例目。子宮移植には倫理面などの問題点を指摘する声が国内外で根強く、慶応大や関連学会などに協力を求めながら慎重に体制づくりを図る。

 関係者によると、PTは八事日赤で腎移植に携わる専門医や移植コーディネーター、産婦人科医らで構成。5月に設置し、今月2日には子宮移植に詳しい外部アドバイザーを招いて会合を開き、課題や今後の流れを話し合う。移植先進国のスウェーデンへの人材派遣も検討している。

 子宮移植は生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の女性や、がんなどで子宮を失った女性が対象。移植した子宮に、体外受精させた受精卵を入れることで妊娠、帝王切開による出産が期待できる。出産後は子宮を摘出する。

 一方、心臓や肝臓の移植のように生命維持が目的ではないが、健康なドナー(提供者)に負担をかける。拒絶反応を防ぐ免疫抑制剤の赤ちゃんへの影響など不明な点もある。

 日本を含め16カ国以上で研究が進んでおり、スウェーデンでは少なくとも5人が移植後に出産したと報告されている。国内では慶応大と京都大、東京大の合同プロジェクトチームが2008年から研究を開始。サルを対象に12年、いったん自身の子宮を摘出後に戻し、出産させることに成功した。慶応大は今年1月、年内にも学内の倫理委員会に実施を申請することを明らかにしている。

 八事日赤は移植外科を持ち、腎移植では全国トップ級の実績を誇る。移植者を対象とした妊娠、出産外来も実施しており、免疫抑制剤の影響に関する知見も豊富という。

 医療関係者でつくる日本子宮移植研究会理事を務める八事日赤の山室理(おさむ)第一産婦人科部長は「まだ、準備に取り掛かった段階。当院だけでの実施は不可能で、関係者の理解と協力を得ながら、あわてずに進んでいきたい」と説明。日本移植学会や日本産科婦人科学会とも協議しながら移植を目指す考えを強調した。

 同研究会の菅沼信彦理事長は「子どもを望む患者への選択肢の1つで、各地の医療機関から手が挙がることは患者にとってもメリットがある。日本全体で議論が深まることを期待したい」と話した。

対象 国内に6、7万人

 生まれつき子宮がなかったり、がんなどで子宮を摘出したりした20〜30代の女性たちは、国内に6万〜7万人いるとされる。

 現在、彼女らが遺伝的つながりのある子を持つには体外受精による代理出産しかないが、国内では法的ルールがなく、認められていない。海外でも障害のある子が生まれた場合の引き取り拒否など問題が相次ぐ。

 そんな中、医療技術の進歩とともに、自らのおなかを痛めて出産できる手段として新たに登場したのが子宮の生体移植だ。

 課題は少なくない。ドナーとして第一に想定されるのは移植対象者の母親だが、10時間以上ともされる手術の身体的、精神的負担は大きい。「新しい命のため」という周囲の期待が重圧となり、意に沿わない提供に追い込まれる懸念がある。脳死移植を求める意見もあるが、臓器移植法で対象とされる臓器は心臓や腎臓などで、子宮は含まれていない。救命のためというこれまでの移植の大義を揺るがすことにもなり、疑問の声が出るだろう。

 それでも出産の可能性を絶たれている女性たちの希望となるのなら、少なくとも実施へ向けた検討は続けるべきではないか。今は東京を中心とした医療界の一部の取り組みにとどまっているのが実情だが、移植医療に実績がある病院が地方から新たに手を挙げたことは、国内の体制づくりを促し、議論を深める契機になり得る。(社会部・小椋由紀子)

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