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広がる梅毒、母子感染も 妊婦健診、必ず受けて

(2017年8月8日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

昨年の報告数 42年ぶりに4000人突破

梅毒の感染報告数

 性感染症の梅毒患者の増加が止まらない。国立感染症研究所(感染研)の昨年1年間の報告数は4518人と、2011年の827人から急増。特に20代の女性の感染が目立ち、妊娠時期と重なって妊婦から赤ちゃんに母子感染する「先天梅毒」の報告も増えている。赤ちゃんが死亡したり後遺症が出たりした例も報告されており、産婦人科医らが危機感を強めている。 (細川暁子)

 梅毒は性行為やキスなど粘膜同士の接触により、「梅毒トレポネーマ」という細菌が体内に入ることで感染する。男女間、同性間、いずれの性的接触でも、男女ともに感染の恐れがある。予防にはコンドームの利用が有効だ。

 感染から2〜4週間ほどで性器や唇にしこりができるが、数ミリ〜数センチ程度で痛みがなく、1カ月ほどで消えるため見逃しやすい。4〜8週間後には手のひらや足の裏など、体全体に赤い発疹が出て、発熱やだるさを訴える人もいる。抗生物質を服用すれば治癒するが、免疫はつかず何度でも感染。治療を受けないと、神経が侵され手足のまひなど後遺症が出ることもある。

 感染研によると、昨年1年の感染者は4518人で、1974年から42年ぶりに4千人を超えた。60年代には1万人を超えていたが、その後は減少し2010年の患者数は621人だった。ところが11年の827人から増加傾向に転じ、14年が1661人、15年が2690人と爆発的に増えている。

画像梅毒を引き起こす「梅毒トレポネーマ」(国立感染症研究所提供)

 患者が増えている背景はよく分かっていないが、愛知医科大感染症科の三鴨広繁教授は、患者らの証言から、性風俗店を利用する外国人客が増加し、感染を広げている可能性を指摘。発疹をじんましんと誤診された患者もいて、「医師の見逃しも感染を広げているのではないか」と推測する。

 昨年の感染者のうち約7割は男性で、年齢は20〜40代と幅広い。約3割の女性患者は半数が20代。11年ごろは男性同士の性行為による感染が多かったが、13年以降は男女間での感染が目立っている。

 怖いのが、妊娠時期と感染が重なり、妊婦から胎内の赤ちゃんに菌がうつる「先天梅毒」だ。梅毒は胎盤を通じて母子感染する「トーチ症候群」のひとつで、赤ちゃんに障害が出たり死亡したりすることがある。13年は4例だった先天梅毒の報告は14年に10例、15年に13例、16年に14例と増加傾向にある。

 産婦人科医らも危機感を強めている。日本産科婦人科学会は昨年、全国の病院628施設を調査。257施設から回答があり、11〜15年の5年間に感染した152人の妊婦を調べたところ、うち21人の赤ちゃんが先天梅毒になっていたことが分かった。赤ちゃんの5人は死亡、4人に後遺症が出たという。

 梅毒の血液検査は妊婦の定期健診に含まれており、早期に抗生物質を投与すれば赤ちゃんへの感染を防げる可能性がある。だが152人の妊婦のうち、4分の1は健診を受けていなかった。調査に関わった日本大産婦人科学系の川名敬教授は、「経済的な理由や望まない妊娠などで妊婦健診を受けず、梅毒の感染に気付かなかった妊婦が多いのではないか」と推測。「梅毒患者の裾野が増えて、妊婦や赤ちゃんまで感染に巻き込まれている」と危惧する。

 感染をこれ以上広げないために重要なのは、患者がいち早く治療を受けることだ。梅毒の検査や治療は、男性は泌尿器科や皮膚科、女性は婦人科などで受けることができる。感染研の大西真・細菌第一部長は「不特定多数との性行為や風俗店の利用など、リスクの高い行動を取ったことのある人は、検査を受けてほしい」と話す。

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