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亡き友思い白血病研究 信州大医学部 盛田大介さん

医人伝

(2017年8月8日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

信州大医学部(長野県松本市) 小児科助教 盛田大介さん(35)

画像研究室の無菌スペースで、CAR−T療法の研究に励む盛田大介さん

 「原点」の光景がある。22年前、中学1年で白血病を発症して長野県立こども病院(同県安曇野市)に入院。院内学級に初めて行った日のことだ。

 「小さなテーブルを囲んで、小学生たちがニコニコ笑いながら勉強や工作をしていました。髪の毛がすべて抜けた子、脚を切断して車いすの子、みんな大変な病気なのに、底抜けに明るいんです。自分が恥ずかしくなりました」

 それまでは、学校に行けなくなった疎外感や「今までの自分に戻れなくなる不安」におびえ、ふさぎ込んでいたが、心から信頼できる仲間たちと出会い、前向きになれた。入院は1年以上に及んだが、姉とHLA(白血球の型)が一致して骨髄移植に成功し、回復した。

 退院後は、勉強も遊びもブランクを取り戻すことに全力投球。恋愛へのあこがれも強かった。そんな中、闘病仲間が相次いで亡くなった。院内学級へ誘ってくれた1歳上の男の子、看護師を目指していた1歳下の女の子、いつも「プラス思考が大事よ」と話していた小学生の女の子…。「彼らが亡くなって身勝手な自分が生き残ったことが、とても理不尽に思えました」。苦しみながら得た答えは「病気の子たちの役に立つ人生を歩むこと」だった。

 日本大医学部に合格。両親は、ローンが済んだばかりの自宅を売って社宅に移り、学費をやりくりしてくれた。志望はもちろん小児科。研修医時代は、沖縄の離島医療も含め幅広い経験を積み、信州大大学院に進んだ。小児科の中沢洋三教授が、留学先の米国で独自のCAR−T療法を研究し、日本に戻ったばかりだった。

 白血病細胞を攻撃する遺伝子を患者のリンパ球に組み込み、増殖させて体内に戻す療法で、コストを抑えることに成功したのが中沢教授の研究。盛田さんは遺伝子発現の効率を高める研究を任され成果を上げた。名古屋大小児科と共同して、近く臨床試験が始まる見通しだ。

 最先端の研究に加え、白血病の子たちの治療、学生たちの教育も重要な役目で、超多忙の日々。妻子の待つ家へ帰るのが明け方になることも珍しくはない。病棟で担当した子を助けられず、心が折れそうになる時もある。そんなときも脳裏に浮かぶ仲間たちの笑顔。「頑張って」と励ましてくれる。 (編集委員・安藤明夫)

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