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〈味な提言〉(6) 愛知の鶏料理 季節素材でまぜご飯

(2017年8月13日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

フリー編集者 木村信夫さん

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 農家の庭先に鶏がいる、農村では当たり前の風景だった。「名古屋コーチン」の発祥地でもある愛知では早くから養鶏が行われてきた。愛知では、鶏肉のことを「かしわ」といい、かしわや牛肉をつかったすき焼きのことをひきずりという。冬のごちそうだ。

 愛知の伝統的な鶏料理を「日本の食生活全集」『聞き書(がき) 愛知の食事』の「西三河(安城)の食」にみてみよう。

 《大正の末ごろ、碧海台地安城は日本のデンマークと呼ばれるようになる。不毛の地を開墾して豊かな水田地帯をつくりあげたことと、それをなしとげた農民の開拓精神、また全国でいち早く多角形農業を農民が手がけたこと、共同化をめざして努力したことが、県外各地に認められてデンマークの名声を高めたのである》(同上)

 多くの農家は米と養鶏と蔬菜(そさい)を組み合わせた「三角形農業」を手がけ、さらに果樹を加えて「四角形農業」に取り組む農家もいた。水田1反当たり10羽を目標に、多くの農家は50羽から100羽を飼い、販売収入を得るとともに、鶏糞(けいふん)を土づくりに役立て、廃鶏、破卵などは貴重な滋養源として活用した。

画像したじ飯(千葉寛さん撮影)

 廃鶏の肉は、したじ飯、うどん、野菜の煮つけ、つくだ煮風からめ煮、内臓はきもと卵みち(輸卵管)を煮つけなどにし、鶏がらは煮出して、うどん、煮つけのだしにする。

 鶏を飼っている農家では、主人はもちろん、主婦も鶏をばらす(解体する)ことができる。

 解体のとき、胆のうは破ると苦い汁が肉につくので、気をつけてとり除く。「とりは食うとも、どり(肺)食うな」といわれており、食べる内臓は、砂ぎも(筋胃)、きも、心臓、黄身卵(卵巣)、卵みちである。

 まぜご飯をしたじ飯といい、鶏をつぶしたときに、春はタケノコ、秋からはニンジン、ゴボウというぐあいに、季節素材を生かしてつくる。冷めても熱いお茶をかけるとこれがまたうまい。

 からめ煮は、鶏肉を細かに切り、水を少しにして砂糖だまりで味をつけ、汁がなくなるまでゆっくりと煮こむ。砂糖だまりが鶏肉にからまってつくだ煮のようになる。日もちがよいので、弁当のおかずに合う。

 きもや卵みちは独特のにおいがあるので、黄身卵と一緒に煮つける。きもも卵みちも小さく切り、黄身卵とともに砂糖だまりで味を濃くして煮るとにおいも気にならない。

 卵を産み続けて生を全うした「親鶏」だから、肉は固めだが味が濃く、歯ごたえがあり、だしがよく出て、もつや皮まで食べがいがある。こうして命を無駄なくいただく。

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