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児童虐待 最悪12万件

(2017年8月17日) 【中日新聞】【夕刊】【その他】 この記事を印刷する

昨年度 心理的虐待が半数

児童相談所の虐待対応件数の推移

 全国に210カ所ある児童相談所が2016年度に対応した児童虐待の件数が12万2578件(速報値)となり、過去最多となったことが厚生労働省のまとめで分かった。児童虐待への意識が高まり、相談・通告が増えた面もあるが、配偶者への暴力で子どもが心理的ストレスを受ける「面前DV」などは増えており、依然として歯止めがかからない実態が明らかになった。

 集計を始めた1990年度から26年連続の増加。初めて10万件を超えた15年度と比べ18.7%増えた。厚労省の担当者は「児相の態勢を充実させるとともに、子育て支援や母子保健などを担う市町村との連携を進めたい」としている。

 15年度に死亡した子どもに関しては、厚労省の専門委員会は初めて、自治体に、虐待死とはみなさなくても、疑われるケースも報告を求めた。専門委がその内容を精査し、8人については独自に虐待死と判断した。

 その結果、無理心中を除く虐待で死亡した子どもは14年度から8人増の52人。うち30人はゼロ歳児が占めた。背景には、予期しない妊娠など母親が抱える問題もあることから、専門委は、妊娠期間中を含む切れ目のない支援体制が必要と提言した。

 16年度の都道府県別の児童虐待の対応件数は、大阪が1万7743件で最多。東京1万2494件、神奈川1万2194件と続いた。最も少なかったのは鳥取で84件、島根214件、佐賀275件の順だった。愛知県は7044件(前年度比956件増)、三重県1310件(同19件増)、岐阜県1004件(同14件減)、滋賀県1283件(同332件増)。

 前年度からの増加率でみると、福島(1.81倍、956件)、富山(1.76倍、629件)、福岡(1.75倍、4194件)などが高かった。一方、宮城など7県では減少した。

 虐待の内容別では、面前DVや暴言、無視などによる心理的虐待が、15年度から1万4487件の増加となる6万3187件(51.5%)。身体的虐待が3万1927件(26.0%)、育児放棄(ネグレクト)が2万5842件(21.1%)、性的虐待が1622件(1.3%)だった。

疑惑精査、虐待死予防に力

 児童虐待に関する厚生労働省の専門委員会が初めて、虐待死とは判断できなくても、疑われるケースについても自治体に報告を求めた。見過ごされてきた虐待事案の掘り起こしに努めるとともに、次の犠牲者を出さないための予防策につなげるのが狙いだ。

 厚労省によると、虐待死と扱うかどうか各自治体で判断が分かれている。今回、初となった2015年度分として、虐待死が疑われる事例は12件報告され、専門委が精査した結果、8人を虐待死と判断した。

 このうち、就寝中の乳児が急性呼吸不全で亡くなったケースでは、警察は、うつぶせに寝かせていた際の事故死と判断していた。子どもは乳児院に預けられていた経験があり、乳児院が指導していたにもかかわらず、あおむけに寝かせていなかったことから、専門委は、養育能力が不足していた可能性を指摘。虐待死と判断した。

 また、父親から暴力を受けていた少年が自殺したケースでは、自治体は「直接的な虐待行為で死亡していない」としていた。だが、この判断も覆った。少年は児童相談所に通っていたが、両親の反対により中断。暴力や暴言がエスカレートした形跡もあり、専門委は「心理的虐待もあった可能性がある」とした。

 専門委の委員長を務める山縣(やまがた)文治・関西大教授は「範囲を広げれば虐待が疑われるケースはまだあるはず。なぜ、その家族に支援が及ばなかったかを考えることも大事だ」と話している。

「気付き」が増えた結果

 淑徳大の柏女霊峰(かしわめ・れいほう)教授(子ども家庭福祉学)の話 今回の集計結果は、児童虐待の発生が大きく増えたというより、児童相談所への通告態勢が整い、虐待への「気付き」の網の目が細かくなった結果、掘り起こしが進んだと考えるべきだ。国は児相の機能強化のため、虐待家庭への指導に家庭裁判所が関わる新たな仕組みを導入したり、児相に弁護士らの配置を義務付けたりしているが、児相に全て任せるのは無理がある。子育て支援を担う市町村の役割をもっと強めるなど、家庭・家族に寄り添う視点の下に対策を充実させるべきだ。

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