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増える透析患者、増えぬ腎提供 負担抱え、何年も待機

(2017年8月22日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像人工透析を受ける高橋元治さん。腎臓移植を受けない限り週3回通い続ける必要がある=名古屋市港区の名港共立クリニックで

 臓器移植の待機患者の中で最も多いのが、重い腎臓病の人たちだ。移植を希望する患者が1万2000人を超えるのに対し、脳死や心臓死をした人からの腎臓の提供件数は年100件台で、平均待機期間は14年を超える。糖尿病患者の増加を背景に人工透析が必要な患者は増加しており、患者団体は移植への理解を求める地道な活動に取り組んでいる。(稲田雅文)

 名古屋市港区の名港共立クリニック2階の透析室。透析装置を備えた80余りのリクライニングチェアがずらりと並ぶ。愛知県腎臓病協議会事務局長の高橋元治(もとはる)さん(58)=名古屋市熱田区=が座ると、看護師が左腕に針を刺し、透析装置と血液をやりとりする2本の管をつないだ。重い腎臓病で腎不全となった場合に、機械で血液中の老廃物や余分な水分を除去するのが人工透析だ。高橋さんは週3回通い、毎回4時間かけ血液を浄化している。

 高橋さんが人工透析を受けるようになったのは34歳のころ。視界の異変に気付き、眼科に行くと眼底出血が判明。即入院し人工透析の生活が始まった。腎炎が進行し、腎不全による合併症が起こっていた。高校時代に一度、腎臓の組織を採取して調べる検査をしたことはあるが異常は見つからず、直前まで自覚症状はなかった。

 1カ月入院し、勤務先の運送会社は3カ月休んだ。復帰後も、人工透析をしながらのシフト勤務は難しく1年で退職した。「どうやって妻を食べさせていくか、そればかり考えていた」と高橋さん。障害年金とスーパーでのアルバイトで生計を立てた。医療費の公的助成制度が確立しているため自己負担はなかったが、将来が見通せず、子どもをもうけるのはあきらめた。

 腎不全患者は、水分や塩分を取り過ぎると足のむくみなどが出るため、適切な食事を取るなど自己管理が求められる。旅行に行く際は、行き先で透析を受ける病院を予約しておかねばならない。生活に慣れるまでに3、4年はかかった。

 腎臓移植を希望する患者として登録したのは1995年。待機13年目に「候補に選ばれた」と携帯電話に連絡が入ったが、より優先度が高い人が移植を受けたため実現しなかった。翌年にも連絡があったが、再び移植はかなわなかった。「人工透析の時間的な制約から解放されるために、一度は移植を受けたい」と願う。

 患者会に携わったことがきっかけで、3年前から同協議会の事務局長を引き受けた。行政に働き掛けて透析患者の医療費助成の維持に努める一方、力を入れるのが移植医療の啓発活動だ。毎年10月の臓器移植普及推進月間に合わせて移植を学ぶセミナーを開いているほか、10月の第1日曜日を中心に、県内各地の患者会と連携し、街頭に立つ。

 高橋さんは「一般の人に臓器提供を考えてもらうだけでなく、腎不全患者の中にも移植という選択肢を知らない人がいる。地道な広報や教育活動をしていくしかない」と話す。

 協議会主催の移植セミナーは9月17日午前10時から、名古屋市中村区のウインクあいちで開かれる。無料。腎臓移植の現況報告や体験談の発表がある。

背景に糖尿病患者の急増

透析患者と腎臓移植待機患者の推移

 日本透析医学会によると、国内の2015年末時点の透析患者は32万4986人で前年より4538人増えた。透析を始めた原因は、糖尿病性腎症が最多の43.7%。以前は慢性糸球体腎炎がトップだったが、糖尿病患者の急増を背景に1998年に逆転した。

 国民の386人に1人が透析を受けている計算で、厚生労働省によると、世界主要国のなかでは日本が最も人口当たりの人工透析患者数が多い。1人月40万円かかり、年1.57兆円を費やしている。

 7月末現在で腎臓移植を希望する登録者数は1万2315人と、心臓(626人)、肺(335人)、肝臓(321人)に比べ桁違いに多い。2010年の臓器移植法改正で脳死下での臓器提供が増加した半面、心臓死からの腎臓提供が減少しており、腎臓移植の件数は横ばいのまま、年130〜210件で推移する。親子や配偶者など、親族から提供を受ける生体腎移植が年1500件実施されている。

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