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就労障害者69人解雇へ 名古屋の支援会社、資金難で

(2017年8月23日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

 障害者が働きながら技術を身に付ける就労継続支援A型事業所を運営する株式会社「障がい者支援機構」(名古屋市北区)が経営に行き詰まり、同区と愛知県清須市の事業所2カ所で障害者計69人が今月末で解雇されることが分かった。他地域でも同様の事業所の閉鎖があり、厚生労働省は経営実態を把握するよう自治体に通知した。(出口有紀)

 同社は2013年から全国6カ所で、障害者と雇用契約を結んで最低賃金以上を払って軽作業などの職業訓練を行う就労継続支援A型事業所を運営していた。ところが今年7月末までにすべての事業所が閉鎖された。

 8月上旬に開かれた名古屋市北区の事業所の説明会では、同社の代表者が8月末で障害者全員を解雇すると告げたという。

 この事業所には、障害者1人当たり1日5千円程度の給付金が国から支払われていたが、厚労省は3月に、給付金を給与に充てないよう指導を強化した。代表者は説明会で「給付金で皆さんの給料のほとんどを払っていたが、払い続けるのが難しくなった」などと謝罪。愛知県と名古屋市によると、同社関係者は県と市に対して「最低賃金を払えるような仕事がなく、資金繰りがうまくいかなくなった」と閉鎖理由を説明したという。

 設立当初から、この事業所でフルタイムで働いていた男性(70)は「最近は午後2時には仕事がなくなり、家に帰っていた」と話す。男性の妻は「ここの収入と年金で何とかやってきたのに、どう生活すればいいのか」と困惑する。

 解雇予定の障害者を支援するため、ハローワーク名古屋中などは面談などを行っている。本紙は同社に書面などで取材を複数回申しこんだが、22日までに応答はなかった。

 A型事業所を巡っては、6月に岡山県倉敷市で運営企業が経営に行き詰まり、利用者223人が解雇された。同市によると、再就職先が決まったのは希望者195人のうち18人にとどまっている。

 営利目的の参入も 国の給付金、賃金に充当

A型事業所はここ数年急増している。厚生労働省によると、全国で2013年4月に約1600カ所だったのが、今年4月には2倍以上の約3600カ所となった。半数以上が企業などの経営で、全国の共同作業所でつくる連絡会「きょうされん」愛知支部の大野健志事務局長(46)は「国からの給付金を見込んで、金もうけのために進出した企業も少なくない」とみる。

 A型事業所は、障害者雇用の場を増やそうと、民間企業の参入が認められた。だが、厚労省の調査でも給付金で障害者の賃金を払っていた事業所が確認されたため、3月に給付金を賃金に充てないよう指導を強化。厚労省は「悪徳な業者も出てきたので健全化を図りたい」と説明するが、「今後、運営ができなくなった事業所の閉鎖が相次ぐ恐れがある」と危惧する福祉関係者もいる。

 A型事業所ではこのほか、意図的に障害者の労働時間を短くして事業所の収益を増やし、障害者が職業訓練を積めない事業所があることも明らかになっている。

 松井亮輔法政大名誉教授(障害者雇用・福祉)は「そもそもA型事業所の仕組み自体に問題がある。国や県、市が事業計画や運営実態を十分に把握していないために、安易な形で企業参入が進んでしまった」と指摘する。

 <就労継続支援事業所> 一般企業への就職が難しい障害者へ就労の場を提供する事業所。障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)ができた2006年に制度が設けられた。A型とB型があり、A型は利用者と雇用契約を結び、最低賃金以上の時間給が保証される。B型はA型での就労が困難な障害者が対象で、雇用契約を結ばず、少額の工賃が支払われる。

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