つなごう医療 中日メディカルサイト

イ病 知りたい伝えたい

(2017年8月28日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

富商生 ラジオ番組制作 教育の現状 ドキュメントに

画像18時間の取材記録を書き起こした資料を手にする蔦奈々実さん=富山市の富山商業高で

 富山県の神通川流域で発生した4大公害病の一つ、イタイイタイ病(イ病)の教訓を伝えようと、富山商業高校広報部3年の蔦(つた)奈々実さん(17)=富山市有沢=が、イ病と教育をテーマにしたラジオドキュメントを制作し、放送コンテストの全国大会で披露した。「イ病の被害地域に住んでいても、親も祖父母も関心が薄れ、伝えられる人が減っている」。そんな思いを、7分間の作品に込めた。(木許はるみ)

 蔦さんがラジオドキュメントの制作に取り組み始めたのは昨年8月。市民団体「イタイイタイ病を語り継ぐ会」(同市)や、患者家族、土壌汚染の専門家や教員を取材して回った。作品ではイ病の概要を解説した後、「私はほとんど(イ病を)知らない。学ぶ機会は学校なのだろうか」と問い掛ける。

 語り継ぐ会の調査を引用し、県内の小中高校でさえ、イ病の学習が十分に行われていない現状を紹介。「センター試験対策があり、テーマ学習の余裕がない」という高校教員の話を収めた。

 富山商業高ではイ病を取り上げた授業が行われており、「もっと知りたい。過去の出来事で終わらせず、伝えたい」という生徒らの感想も収録。作品を聞いた同じ広報部の部員たちからは「高校や大学で、被害者から話を聞くことが大切」という率直な反応も返ってきた。

 作品は、NHK杯全国高校放送コンテストのラジオドキュメント部門に出品し、県予選を通過。200作品が出場し、7月下旬にあった全国大会で発表した。

 賞こそ取らなかったものの、審査員からは「大会で終わるのはもったいない」「初めて学ぶことが多かった」という講評があった。

 蔦さんは「教科書でイ病の記述は1〜2行で、4大公害病の一つとして触れられるくらい。知識がないところから取材を始めた」と振り返る。取材の記録は18時間、文字にするとA4判用紙100枚を超えた。コンテストを終え、蔦さんは「学び足りないことがある。今後も知識を得て、伝えていきたい」と志を強めている。

作品の主な要旨

−あなたはイタイイタイ病を知っていますか。

 イ病に苦しんだ母親について、高木良信さん「こういう痛い病気になるのは、なにが原因なんか、ちゃんと調べてくれ、と言うとった」

−私が住んでいる富山市有沢は、イ病が発生した地域なのに、私はほとんど知らない。学校で学ぶ機会はあるのか。

 本校社会科教員「センター試験の対策を見据えると、テーマ学習に時間を割く余裕がない」

−イ病は過去のものか。

 「イタイイタイ病を語り継ぐ会」の向井嘉之代表「イ病予備軍と言うべき、カドミ腎症を持った人はたくさんいる」

−このような事実を知らないでいいか。

 イ病を取り上げた授業に参加した生徒「未来の出来事として伝えていかないと」

 イ病の副教材を制作する教員「一歩間違えば、また似たようなことが起こりうる」

−患者認定を受けた200人のうち、生存者はわずか5人。私たちはイ病を学ぶ機会を求めています。

 イタイイタイ病 神通川上流の三井金属神岡鉱山(岐阜県飛騨市)から流れ出た重金属のカドミウムが原因。川の水や食料を摂取した流域住民に、腎臓障害や極度に骨がもろくなる症状が出た。1968(昭和43)年に国が公害病と認定。病名は患者が「痛い、痛い」と苦痛を叫んだことに由来する。

中日新聞広告局 病医院・薬局の求人