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「幸せなお産」を手助け 明生助産所 鹿野恵美さん

医人伝

(2017年8月29日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

明生助産所(長野県伊那市) 助産師 鹿野恵美さん(55)

画像明るく子育て相談に応じる鹿野恵美さん

 「最近、困ってることはないかな」。赤ちゃんと遊ぶ母親に優しく話しかけた。長野県伊那市の子育て施設で月1回の相談日。母親らに歩み寄り、母乳、離乳食、おむつ、きょうだい関係、どんな悩みでも聞く。

 「話す言葉が少ない」と語る2歳児の母親には、絵本を読んだ時の反応などを聞き取った上で「大丈夫。焦らずに好きな本を何度も読んであげて」。母親はほっとした表情になった。

 市内で助産所を開きつつ、地域を走り回り、子育てに奮闘する母親を支える。市の施設などで年30回以上の育児相談を担当し、非常勤保健師として自治体の新生児訪問も受け持つ。市担当者は「率先して力を貸してくれる頼もしい存在」と話す。

 同市出身。高校時代、新聞で助産師の記事を読み「体に備わった力で自然に産む」ことに心動かされた。地域の健康を守る保健師にも興味があり、3つの専門学校を卒業し両方の資格を取得。公立病院での助産師、旧高遠町役場での保健師勤務を経て、2008年に助産所を開業した。

 開業時、県南部の上伊那地域は産科医不足で、公立病院でのお産の休止や里帰り出産の制限が相次いだ。「自分で助産所を開くなら今だ」と決めた。根幹となる安全面は、先輩助産師が尽力して病院との連携態勢が確立できていた。

 助産所では、妊婦健診に毎回1時間半ほどかけ、二人三脚で出産に臨む関係を築く。出産時は、母親が望む姿勢やペースを大切にする。自宅出産にも応じ、母親が赤ちゃんと向き合うことに集中できる環境を整える。

 5月、同市で第三子を自宅出産した佐藤志穂さん(30)=愛知県犬山市=を介助した。佐藤さんは慣れ親しんだ実家で、夫や同じ家で生まれた上の子2人のそばで産み「出産は暮らしの中にあり、家族みんなのものだと実感できた」と話す。

 「お産の後に『ああ幸せだった。もう1人産みたい』と本能的に感じられる手伝いをしたい。幸せなお産の経験は育児の原動力になるし、母親が『産みたい』と思うことは少子化対策の出発点にもなると思うから」

 今春、長野県助産師会長に就任。「産後ケアが大きな課題。母親が助産師による育児・母乳相談や心身のケアをもっと気軽に利用できるよう、自治体に協力を呼び掛けたい」(岩田忠士)

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