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〈味な提言〉(8) 北海道のじゃがいも料理 だんご、おやきなど多彩

(2017年8月27日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

フリー編集者 木村信夫さん

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 この季節、北海道の味覚といえば、香ばしいトウキビや、ほくほくしたジャガイモが思い浮かぶ。新天地への移住者たちにとって、トウキビ、ジャガイモ、カボチャや、大豆、小豆、うずら豆などの豆類は、いのちをつなぐ大事な主食だった。それだけに、主婦たちは、保存と料理の知恵と技を限りなく凝らした。大正から昭和初めの食生活を古老からの聞き書きで記録した「日本の食生活全集『北海道の食事』」の「道東十勝の食」に見てみよう。

 「掘りたてのごしょいも(じゃがいも)は、ゆでれば皮がはがれやすくなるので、泥を洗い落とした皮つきのままをゆで、手の平でころがしながら食べる。ほっくりしていいにおいがし、くせのない上品な味である」(同上)。これが、北の大地の旬の味である。しかし、このあとが肝心だ。来年の収穫までの1年間、室(むろ)や土穴雪中貯蔵などで芋を保存し、芋からでんぷんを採り、また寒中に凍(しば)れ芋をつくり、さまざまな芋料理で、来年の収穫時期まで食卓をつないだのである。

画像いもすりだんごのみそ汁=千葉寛さん撮影

 生ジャガイモとでんぷんのドッキング料理の一つが「いもすりだんご」。「皮をむいたごしょいもをおろし金でおろし、いもかすと沈んだ澱粉(でんぷん)汁、さらにつなぎに乾燥澱粉を入れ、だんごに丸めてゆでる。ゆでただんごは味噌(みそ)汁やおしるこの実になるが、冷えたときは厚なべに油を引き、焦げ目がつくほどに焼きあげる。砂糖味噌や砂糖醤油(じょうゆ)をつけてもよい。まただんごにしないで中にあんを入れ、まんじゅうにして蒸すのもよい」(同上)。

 ゆでたジャガイモにでんぷんを加えてこねるのが「いももち」。家族や親しい人とストーブを囲んで焼いて食べるのにぴったりだ。ジャガイモをすり下ろして小麦粉、卵と混ぜ合わせ、厚なべで焼き、長ネギ、キャベツ、ニンジンなどの野菜と豚肉の炒め物を包むのが「いもおやき」。お客が来たときなどの、チョッとぜいたくな料理だ。

 「ごしょいも入り蒸しパン」は小麦粉、きなこ、ジャガイモでつくる蒸しパン。これは小昼用や子どもたちのお駄賃用、「ハイカラなものをつくってくれる」と、しゅうとめや子どもたちがほめてくれる。いもでんぷんを小麦粉こうじで糖化させて甘味料「いもあめ」もつくる。ジャガイモ利用はじつに多彩だ。

 カボチャも同じである。貯蔵期間は正月までであるが、ゆでたカボチャとでんぷんをこねてつくる「かぼちゃだんご」「かぼちゃまんじゅう」は、いもだんごとはちがった味と色を楽しめる。ご飯の補いの一品「とうきびがゆ」には、カボチャを入れると甘味が出て、子どもたちに喜ばれた。たくあんも、早く食べる分には、米ぬかと塩のほかに、ゆでたカボチャを入れて、自然な甘味の「かぼちゃ漬」にした。

 甘味も、とろみのでんぷんも自前・自給である。でんぷんを入れると、芋もカボチャもモチモチした食感になる。移住者たちの米や餅への思いから生まれたともいえるが、このような保存・加工・料理の技を駆使するのが、この地を定住の地とするための暮らしの営みだった。

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