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当初から金もうけ 疑い 無届け臍帯血移植事件 解凍、熱湯をかけた可能性 幼児にも使用、感染症懸念 

(2017年9月3日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
無届け臍帯血移植事件の構図

 他人の臍帯血(さいたいけつ)を国に無届けで移植したとして、再生医療安全性確保法違反の疑いで医師ら6人が逮捕されてから三日で1週間。専門知識の乏しい素人が運搬や解凍作業を担い、患者の中には幼児も含まれていた上、一部に適合しない臍帯血を使った疑いも浮上した。経営破綻した民間バンクから譲り受けたものだったが、当初から営利目的が疑われ、愛媛など4府県警の合同捜査本部は実態解明を進める。

 関係者によると、臍帯血販売会社「ビー・ビー」(茨城県つくば市)の社長篠崎庸雄(つねお)容疑者(52)は、2009年に経営破綻した民間バンク「つくばブレーンズ」(つくば市)の株主の一人。ビー社を設立したのは10年4月。つくばブレーンズから臍帯血を譲り受けた直後で、保管実績などもなく、当時から「金もうけ」を疑う声が出ていた。

 臍帯血はビー社から、福岡市の卸売会社「レクラン」(閉鎖)と京都市の「京都健康クリニック」を通じ、各地の医療施設に流出。捜査本部の調べで、ビー社設立以降に三百数十人分が使われていたことが判明した。

 捜査関係者らによると、レクラン元社長井上美奈子容疑者(59)は自ら運び役を務め、白衣を着て冷凍保存した臍帯血を湯で解凍するなど、クリニックでの作業にも立ち会っていた。看護師などの資格はなく、熱湯をかけていた可能性もあり、専門家は「熱湯をかけた場合、細胞は壊れてしまう。素人としか思えない」と指摘した。

 京都健康クリニックが移植に適していない臍帯血を使用した疑いも判明。患者の白血球型(HLA型)で、免疫に関わる6種類の物質(抗原)のうち4種類以上が一致することが望ましいが、「ビー社の在庫が減っていくと適合する型も少なくなり、勝手に基準を甘くして移植したケースがあった」(捜査関係者)。

 一方、流出先の各地で移植を受けた患者の中には幼児も含まれていた。日本医師会は逮捕後の声明で「保管状況によっては深刻な感染症のリスクも懸念される」と指摘している。

 捜査本部は業者だけでなく、「表参道首藤クリニック」(東京都渋谷区)院長の医師首藤紳介容疑者(40)を逮捕し、別の医師らも任意で調べている。捜査関係者は「(同法では)形式犯にすぎないかもしれないが、わらにもすがる思いの患者を食い物にしていたなら許せない」と語った。

 無届け臍帯血移植事件 愛媛など4府県警は8月27日、国に届け出をせず、がん治療や美容効果などの目的で患者7人に臍帯血を移植したとして、再生医療安全性確保法違反容疑で都内クリニックの医師や販売業者ら計6人を逮捕した。2014年施行の同法の違反容疑で立件は初めて。臍帯血は母親と胎児を結ぶへその緒と胎盤の中に含まれる血液で、厚生労働省は今年5〜6月、無届けで移植したとして都内クリニックを含む12クリニックに治療の一時停止を命じた。

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