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〈味な提言〉(9) 京都の京野菜料理 相性抜群「出合いもん」

(2017年9月3日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

フリー編集者 木村信夫さん

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 秋冬野菜のおいしい季節がくる。京都市中・近郊農家の女性たちは、収穫と振り売りに大忙しだ。大根やかぶ、すぐき菜に京菜、水菜、ねぎ、ほうれんそうなどなど、多彩な野菜を街に届ける。日本文化の中心地だった京都は、旬の野菜の豊かさ、おいしさを最高に楽しむ料理の発信地でもある。「日本の食生活全集 京都の食事」の「京都近郊の食」に見てみよう。

 野菜の楽しみは、季節とともに巡る。例えば、すぐき菜といえば何といっても冬の「すぐき漬」だ。寒気で軟らかくなり甘味を増したすぐきと、塩と乳酸菌の働きであの独自な味と香りが生まれる。農家それぞれの塩や重しの加減、室での発酵温度管理などによる自慢の味を、街の人たちは待つのである。

画像すぐき菜の漬物=千葉寛さん撮影

 しかし、すぐき菜はその前、秋のうちから食卓の友だ。「間引き菜はおしたし、煮もの、漬物と利用範囲が広い。夏からの青菜の不足を待ちわびて、すぐき菜がとれだすと、毎日でも使う。まつたけのとれる時期とも重なり、まつたけとのあえものは最高の味である」(同上より)。やがて3回目の間引きになると、大きく5寸ほどに育ってくるので、塩漬けして商いに持っていく。

 京都には日本全国、諸外国から多くの野菜が流入した。そのなかで土地に適して栽培しやすく、人びとの好み・調理に合う野菜、さらには懐石料理や精進料理に適した品質のものが選ばれ改良されて、京野菜が発展した。市中・近郊の里々の農家は、賀茂川・高野川・桂川が運んだ肥沃(ひよく)な土と水の恵みを生かし、青物の周年利用を可能にする多種類の野菜を、高度で綿密な輪作によって忌地(いやち)を避けながら、何100年も綿々と街の人びとへ届け続けてきた。

 そうした、個性的な野菜の旬の持ち味を生かしていただくのが、京野菜の料理文化である。大根一つをとっても品種のいろいろが、季節の楽しみを増やす。秋冬に収穫する丸大根(聖護院大根)は、ぬかと薄塩の当座漬けがおいしいが、冬の炊き合わせがいちばんだ。「お揚げと炊くとおいしい。だしはだしじゃこで、薄い醤油(しょうゆ)味で炊きあげる。寒さに当たっている大根は、口の中でとろけるようにやわらかく、しかも甘みがあっておいしい。からだも温まり、とくに年寄りなどには喜ばれる」(同上)。

 聖護院大根とお揚げのように、飛びきり味の相性がよいもの同士を「出合いもん」という。京菜(水菜と壬生(みぶ)菜)の出合いもんはくじらのころ(鯨油を絞ったかすを干したもの)。エビイモ・サトイモと棒だらで「いもぼう」、聖護院かぶと鯛(たい)、水菜とお揚げ、九条ねぎとお揚げ、山科なすと身欠きにしんといったように、個性ある京野菜のそれぞれに、大豆食品や全国から届く海の幸、加工品などを組み合わせて、素材双方のうま味を引き出して食感・色あいも大事にいただくのが「出合いもん」。母から娘へと受け継がれてきた「京のおばんざい」の大事な知恵だ。

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