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膵臓がん撲滅 三重大が力

(2017年9月8日) 【中日新聞】【夕刊】【その他】 この記事を印刷する

おなかや背中痛い時疑って 10日に啓発イベント

画像膵臓がんを知ってもらう「パープルリボン運動」のキャンペーン準備をする医師、看護師、学生ら=津市の三重大で

 早期発見が難しく、「最も難治性のがん」と呼ばれる膵臓(すいぞう)がんの撲滅を目指す米国発祥の「パープルリボン運動」に、三重大が国内の中心的存在となって取り組んでいる。10日には同大で啓発イベントがあり、医師らは「多くの人に膵臓がんを知ってもらうことが、早期発見で救える患者さんを増やすことにつながる」と訴える。(森耕一)

 膵臓がんは国内のがんの種類別死亡数で、男性は5番目、女性は4番目に多い。早期発見の有効な検査法がなく、がんと分かった時点でかなり進行しているケースが多い。患者の5年生存率(診断から5年後の生存率)は9%で、胃がん70%、乳がん92%、肺がん39%などと比べ極端に低い。

 膵臓がんは、腹痛や背中が痛いという症状が出る場合もあるが、胃の検査や湿布を貼るなどで様子を見る患者が多いのが実情。「せっかく症状があるのに、医師も気付かないケースが多い」と三重大の医師らは指摘する。手術すれば5年生存率は3〜4割に高められるが、60%以上の患者は進行していて手術まで進めないという。

 三重大医学部は伝統的に膵臓がん研究が盛んで、同大病院は現在も毎年100人ほどの患者を治療する。岸和田昌之講師(44)は「医師や一般の人に膵臓がんにもっと関心を持ってもらい、小さな症状があった時に膵臓がんを疑うようになってもらいたいという声が若手を中心に広がった」と話す。米国の患者遺族が紫色をシンボルカラーに始めた膵臓がん克服のためのパープルリボン運動を三重でも展開しようと、2012年に若手医師、医学生らが紫の服を着て初めて学内を歩いた。

 それから毎年イベントを続けており、岸和田講師は「国内ではまだ運動が知られておらず、6年も活動を続けているのは三重大だけ」と話す。参加者は約300人まで増え、医師や看護師、医学生に加え、患者と家族、そして家族を膵臓がんで亡くした遺族も少なくない。今年初めて運営に加わる看護師の福井奈央さん(23)は「おなかが痛いと思った時にちゃんと調べておけば良かったと後悔している患者さんが本当に多い」と参加理由を話す。

 今年は10日午前9時から、紫の服などを着た参加者がキャンパスなどのウオーキングを開始。途中、学生らが企画した膵臓がんの知識を深めるクイズなどに挑戦する。午後1時からは同大医師らが最先端の診断、治療法や緩和ケアなどを一般向けに講演し、医師らによる個別相談もある。

 岸和田講師は「紫色の物を身に着けて気軽に参加し家庭や地域で膵臓がんのことを話してほしい。将来は乳がんのピンクリボン運動のように広がれば」と願う。

膵臓がん

 膵臓は胃の背中側にあり、消化液の膵液をつくり、糖の代謝に必要なホルモンのインスリンなども分泌する。膵臓がん患者は国内で年間約4万人に上り、肥満、飲酒、糖尿病などがあるとリスクが上がる。画像診断での発見が難しく、他のがんの治療が進歩していることなどから、将来は死亡数ががんの中で2位(現在男性5位、女性4位)まで上がる可能性が指摘されている。三重大は膵臓がん研究で国内をリードし、日本膵臓学会で医師向けの治療指針を策定する委員長は、同大肝胆膵・移植外科の伊佐地秀司教授が務めている。

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