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〈味な提言〉(10) 岐阜・飛騨白川のほんこさま料理 年中行事一の豪華膳

(2017年9月10日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

フリー編集者 木村信夫さん

 富山県、石川県と接する飛騨の白川村は岐阜県一の豪雪地帯。庄川沿いに点在する各集落の人々は、耕地が狭く分家するだけの土地がないため、古くから合掌造りの大きな家で大家族で暮らしてきた。雪が解けると山菜を摘み、蚕を飼い、雑穀や野菜を育て、秋の収穫が終わった秋じまいには「ほんこさま」が各家で行われる。

 ほんこさま(報恩講)は浄土真宗の開祖親鸞聖人の御徳をしのび、その恩に感謝する行事で、「日本の食生活全集」(農文協刊)の『富山の食事』や『福井の食事』でも紹介されているが、ここでは、『岐阜の食事』の「飛騨白川の食」に見てみよう。

 「『ほんこさま』の日は僧侶を招き、親せき一同が集まり、大きな仏壇の前で仏と共食する。12月に入ると寺と相談して日どりを決め、僧侶は各家を回る。招かれた親せきは、米一升とかろうそく5本ぐらいを持参しておまいりする。お経が終わると、『なみあみだぶつ』の名号(みょうごう)で座敷がわきあがる。それから僧侶の法話があり、お斎(とき)である。お斎には、白川村の年中行事のなかでも一番手をかけた料理をつくる。材料は一年中手しおにかけてつくったものばかりで、山菜の煮しめや、自慢の固い焼き豆腐など、精いっぱいのごちそうをする」(同上)。

画像ほんこさまのごちそう。膳外のちゃのこ(左)、おけそく、膳内の(左上から時計回りに)ちゃつ、つぼ、豆腐のみそ汁、白飯、中央がちょく=千葉寛さん撮影

 まず白飯。そして「ちゃつ」には焼き豆腐、ニンジン、ゴボウ、ぎぼしの白あえ、ヨメナのあぶらえあえやゼンマイ。白川では豆腐をよくつくり、ごちそうの主役とする。押しが強く硬い豆腐で、正月やほんこさまでは焼き豆腐にする。

 「ちょく」にはささげ豆の煮豆、汁わんは豆腐のみそ汁、「つぼ」にはジャガイモの2つ切り、ニンジンの輪切り、焼き豆腐の煮しめ。「おけそく」という米の粉でつくった白いもちも並ぶ。米の粉に熱い湯を注ぎながら、こね鉢でよくこね、型に入れて丸もちに。できあがったら7つほど重ねてお供えし、お下がりを焼いてたまりをつけて食べる。おけそくは「お供束」のこと。

 高坏(たかつき)には、クルミ、勝栗、いり豆、カヤの実などの「ちゃのこ」がのっている。カヤはイチイ科で、楕円(だえん)形の実を付け、これをよくいっておやつにする。この辺で採れるオニグルミは、殻が堅く実際に食べられる量は少ないが、濃厚な味がしておいしい。とくにほんこさまの「ちゃのこ」には欠かせない。

 ほんこさまで出されたごちそうはすべてを食べるのでなく、ほお葉包みにして持ち帰る。ほお葉4枚とわら数本をうまく使って料理を包む。お菓子も、「端きらず」という一番わるい和紙に包んで持ち帰る。

 飛騨白川といえば700年の伝統を持つ「どぶろく祭り」がある。これも、実りの秋を祝い、一年の疲れをねぎらい合う、神と人との共食の場である。

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