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不登校につながる「ネット依存症」

(2017年9月19日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

治療は「親子関係」から 自己肯定感 高める接し方を

画像シンポでネット依存症の治療について報告する三原さん(左)、片上医師(右から2人目)ら=横浜市で

 夏休み明けは、子どもたちの不登校が増える時期。その原因の一つとして10年ほど前から注目されてきたのが、ネット依存症(インターネット使用障害)だ。中学生から大学生までの男子に多くみられ、オンラインゲームに没頭するケースが多い。課金制のゲームで浪費したり、親との関係がこじれて、暴力につながることも。8日に横浜市で開かれた日本アルコール関連問題学会のシンポから、2つの医療機関の取り組みを紹介する。 (編集委員・安藤明夫)

 「この時期の外来は、新しい予約がぎっしりです」。大阪市立大病院精神神経科の片上素久医師が説明した。大半はオンラインゲームに没頭して、生活が昼夜逆転し、夏休み明けから学校に通えなくなった子どもたちだ。

 こうしたネット依存症が広がる原因を、片上医師は「勉強で1番になることは難しくても、ゲームでは成果が出て、友達の称賛を浴びることができる。現実の社会で成果が上がらない場合は、依存しやすくなる」と分析する。親は治療に熱心でも、本人の治療意欲は著しく低いのが共通点だ。その状態で無理にネットを絶たせると、ますます治療から遠ざかってしまう。親の「過度な期待」に応えられず、自己否定感を抱いている場合が多く、家族の関係のゆがみを修正することが治療の基本だという。

 片上医師は、自己肯定感を高めるためには、家庭で親が接し方を改める必要があり▽少しでも本人ができたことをほめる▽新しいチャレンジにはお駄賃をあげる−などの対応が有効と指摘した。

 治療法として、集団精神療法も取り入れている。互いの体験を語り合うことで、ネットに依存している自分の状態を把握し、孤独感が薄まることで病気に立ち向かう力になるという。

 依存症の治療で知られる国立久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の臨床心理士・三原聡子さんは「ゲームの刺激に対する脳の前頭葉などの反応は、アルコールなどさまざまな依存症と似通っている」と指摘し、進行すれば治療が必要になることを強調した。

 同センターでは、認知(考え)のあり方を修正する認知行動療法、ネット以外の楽しみを見つけるためのデイケアなどのほか、必要に応じて2カ月程度の入院治療を取り入れている。

 スポーツ、作業療法、グループ療法などを組み入れつつ、睡眠や栄養の状態を改善し、今後の生活設計を医師らと話し合っていく治療で、ネットを使う回数が減ったり、学校へ通えるようになるなどの成果が出るケースが多い。2014年からは、夏休みなどに治療キャンプを実施。渋々参加した子どもたちは、ボランティアの大学生と接したり、自然に触れたりする中で新しい楽しみを覚え、ネットを使う機会を減らせることが多いという。

 ネット依存症を扱う医療機関は徐々に増えてきたが、治療はまだ手探りの状態。三原さんは今後の課題として▽依存対象や治療段階に応じた効果的な認知行動療法のテキストの作成▽臨床データの蓄積▽予防教育への応用−などを挙げた。

 ネット依存症 インターネットに過度に没入し、パソコンや携帯が使用できないといらだちを感じるなどして、実社会の人間関係や心身の健康に弊害が出ているのに、依存をやめられない状態のこと。中国や韓国でも大きな社会問題になっている。

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