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がん医療の透明性確保を

(2017年9月19日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

病院別 5年生存率初公表 特徴知り、受診の参考に  

がんの部位別の5年生存率

 国立がん研究センターは、がんと診断された人が5年後に生きている割合を示す「5年生存率」の病院別データを初めて公表した。地域のがん医療を担う「がん診療連携拠点病院」など全国の188施設のデータで、うち中部地方の37施設の結果を詳報する。 (小中寿美、稲田雅文)

 5年生存率は、がん治療の成果を評価する重要な指標。ただ今回は1年分の集計で症例数が少なく、患者の年齢やがんの進行状況が数値に大きく影響しているため、センターは「病院間で比較するのではなく、病院ごとの特徴を知って受診の参考にしてほしい」と呼び掛けている。

 調査したのは2008年にがんと診断された患者の生存率。依頼した425施設のうち、患者の5年後の生死を90%以上把握している209施設の症例約21万件を対象とした。うち188施設がデータ公表を承諾した。報告書には、死者数の多い「主要5大がん」の部位ごとに5年生存率と性別、年齢、進行度を表す病期(ステージ)、治療の有無、発見の経緯、病院のコメントを掲載している。

 患者の年齢や病期が病院ごとに違うほか、9年前の診断に対する調査のため、多くの病院で治療技術や設備が現在とは異なっていることにも留意する必要がある。

 中部地方のデータでは、5部位のうち肝臓がんの5年生存率が病院によって71.6〜15.8%と大きな差が出たが、症例数が少なかったことや、ステージの進んだ患者が多いかどうかなどが影響したとみられる。

 病院別データの公表は、患者団体から要望があったほか、がん医療の透明性を確保する目的で行った。がん対策情報センターの若尾文彦センター長(56)は「病院別の生存率は治療のよしあしを示すものではない」と強調した上で「集計を続けると、病院単位で数値が改善するかどうかを見ることができるようになる。各病院が実態を把握し、医療の質を向上することにつながれば」と話している。今後はステージ別の生存率を算出することも検討している。

 調査は、がん医療の詳しい状況を把握するため、がん診療連携拠点病院などが行う「院内がん登録」のデータを利用した。同センターは、07年分から全体と都道府県別の5年生存率を公表しており、08年分は主要5部位のほかに食道、膵臓(すいぞう)、子宮頸部(けいぶ)、子宮体部、前立腺、ぼうこうを追加した。結果はがん研究センターのウェブサイト「がん情報サービス」のがん登録・統計ページで公表している。

 診断後、転院するなどして継続的な治療を受けていない患者の生死の把握は、主に自治体に照会している。ただ、自治体によっては本人の同意がないと対応しないなどの課題がある。照会した件数のうち2割近くは生死が不明で、把握の割合に影響している。

 中部地方のうち三重県は4施設がデータを提供したが、1施設は非公表、残り3施設は把握割合が90%以下で集計対象にならなかった。名古屋、岐阜、金沢の各大学病院も90%に満たなかった。

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 ※データは「がん診療連携拠点病院院内がん登録 2008年生存率集計報告書」から抜粋

 <表の見方> 生存率の数値は「相対生存率」。がんと診断されて5年後に生存している患者の割合を示す「実測生存率」を、一般の日本人で5年後に生存している人の割合「期待生存率」で割って算出する。がん以外の病気や事故によって死亡する割合を考慮して補正している。症例数が50未満の場合は信頼性が低くなるため公表していない。

 病期は国際的な分類に基づく。早期の「1期」と最も進行した「4期」を掲載したが、報告書は2、3期も公表している。症例数が10以下の場合は個人が特定される可能性が高いとして公表していない。

 中部地方では、集計対象となった施設のうち福井大病院と三重中央医療センターの2施設が「病期をひとまとめにした生存率での評価は意味がない」などとして公表に応じなかった。

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