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〈味な提言〉(13) 和食を伝え継ぐとはどういうことか ふるさとの味 100年後も

(2017年10月1日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する

フリー編集者 木村信夫さん

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 『日本の食生活全集』(都道府県別・全50巻 農文協刊)を基に、食を巡る農家や庶民の知恵を紹介してきたこの連載も今回が最終回。

 この『食生活全集』は大変多くの方々に愛され、日本の食研究の一級の資料としても高い評価を得てきた。2013年、「和食・日本人の伝統的な食文化」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたが、遺産登録にむけた「提案書」のなかでも「最大級の食文化のデータベース」としてこの『食生活全集』が特筆されている。

 私は、この全集の編集に農文協の職員として携わり、その後、食育推進の活動に取り組んできた。若い人たちに『食生活全集』の話をする機会もあったが、興味深く聞いてくれた。「農村にはこんなにも豊かな『食』が行事とともに存在していたことが、まるで物語のように描かれていて感動した」と20代の青年。『食生活全集』が現代の若者にも読み継がれていることが励みとなり、本全集が描いた「地域がそだてた食のしくみと技」の伝承こそ「和食を伝え継ぐ」ことではないかとの思いを込めて『和食を伝え継ぐとはどういうことか』(農文協刊)という本をまとめた。「和食文化国民会議」前会長の熊倉功夫さんからは、「この国と子どもたちの未来にむけたメッセージが本書の“和食の世界”にたくさんつまっている」と、うれしい推薦文をいただいた。

画像箱ずし(食生活全集「愛知の食事」<尾張の水郷の食>より)=千葉寛さん撮影

 『食生活全集』の完結から24年たった今年11月、農文協では『食生活全集』の実践版・実用的再現版ともいうべき、『伝え継ぐ 日本の家庭料理』(全16冊)の発行を開始するという。企画・編集は、地域に残されている特徴ある家庭料理を聞き書き調査し、その背景とともに記録する活動を続けてきた(一社)日本調理科学会で、学会に所属する全国約360人の研究者の方々が執筆する。地域に残る家庭料理を伝え継ぐには、実際につくり味わうことが大事だ、みんなが再現できるようにレシピとして残したい、そんな思いが募って企画がスタートしたという。

 第1回配本は「すし」。全国から80品の個性豊かなすしが集まり、愛知県からは2種類の箱ずしが紹介される。西三河では小さめの穴子「メジロ」がちょっとぜいたくな具で、尾張水郷地帯では川魚「モロコ」の甘露煮が具の定番。それぞれに彩り鮮やかにつくられる。1959(昭和34)年の伊勢湾台風で愛知県の水系は大きな被害を受け、それ以来収穫が減った魚介も多いそうだが、それでも家々では箱ずしの型が大切に受け継がれ、箱ずしはハレの日の楽しみという話をあちこちで聞いたという。

 今後刊行される全16冊の中ではみそ煮込みうどんや名古屋コーチンのひきずり、鬼まんじゅうといったポピュラーなものから、「へぼ飯」(蜂の子ご飯・奥三河)や「じょじょ切り」(ぜんざい風の小麦麺・沿岸部)、「お釜ごんごん」(おはぎ状のもの・水郷地帯)など、地元以外ではすぐには分からないかもしれない料理もレシピが紹介されるという。それらはみな、今後も、百年後も伝え継ぎたいふるさとの味なのだろう。私も楽しみにしている。=終わり

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