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コーディネーター 要の存在 スムーズな臓器提供へ尽力

(2017年10月3日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

「皆が納得できる最期を」

画像臓器提供の体制整備を考える会議でアドバイスをする小林由起子さん(奥の左から3人目)=愛知県岡崎市の岡崎市民病院で

 臓器移植が実現するためには、臓器をあっせんする日本臓器移植ネットワークや病院など、多くの機関や人がかかわる必要がある。臓器提供を考えている家族に移植について説明し、提供がスムーズに進むよう連絡や調整を担うのが、臓器移植コーディネーターだ。ネットワークに所属するコーディネーターの活動を取材した。(稲田雅文)

 岡崎市民病院(愛知県岡崎市)の会議室に先日、医師と看護師、臨床工学技士の計6人が集まった。臓器提供がスムーズに進むよう院内体制づくりを考えるため毎月開いている会議で、7月にあった心停止後の腎臓提供を振り返り、改善すべき点などを話し合った。

 この会議に同席したのが同ネットワーク名古屋オフィス(名古屋市中区)のコーディネーター小林由起子さん(44)と、愛知県のコーディネーター古田洋子さん(62)の2人。脳死状態を経て亡くなった患者の症例の検討で、医師から家族に臓器提供をするか選択肢を示すべきだったかを問われると、小林さんは「臓器提供が可能かどうか迷う症例では、連絡していただければ判断の手助けができますよ」と答えた。

 病院から「臓器提供を考えている家族がいる」との連絡を受けて駆け付けるのが本来の仕事だが、日ごろは担当する中部地方の病院を回って、こうした会議でアドバイスをしたり、医療関係者向けの勉強会の講師を務めたりする。小林さんは「臓器提供を希望するご本人や家族の意向に沿えるよう全力を尽くすのがわれわれの務め。意向に沿うには病院の協力が不可欠なので、普段からの体制整備に協力することも大切な仕事です」と力を込める。

 名古屋オフィスは2月にいったん閉鎖。7月に移転して再開し、小林さんが配属された。すでに8月の中京病院(名古屋市南区)、9月の愛知医科大病院(愛知県長久手市)であった脳死での臓器提供で、役割を果たした。

 愛知医科大病院での臓器提供では、小林さんは現地リーダーとして、提供先病院に関する情報の集約や窓口役を務めた。東京から応援に来たネットワークのコーディネーターと、県の古田さんの2人が家族対応。東京にいるコーディネーターが、臓器を運ぶ航空機など交通手段を手配した。臓器提供の場面では、心臓を担当した九州大病院(福岡市)など、4病院から派遣された摘出チームへの対応が必要になるため、さらに東京から2人の応援を得た。

 一連の手続きが終わった後も、提供者の家族や病院に移植の結果を報告したり、移植を受けた人からのサンクスレターなどを届けたりする仕事が残る。

 小林さんは藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)の集中治療室(ICU)で看護師を務めた後、コーディネーターになった。

 看護師時代、心停止後の腎臓の提供をした家族の様子が忘れられない。脳死状態で救命が困難であることを主治医から伝えられて涙に暮れていたが、提供を決断した翌日は少し明るくなったように見えた。「家族が違う目標を作ったようでした。大切な人を失う家族の支えにもなる臓器提供や移植医療は、すごい医療だと感じました」と話す。

 家族への説明では「踏み込んだ話し合いをして、どうしたらいちばんいい最期が迎えられるのかを一緒に考えます」と小林さん。24時間、連絡への対応が求められ、病院で夜を明かすことも多い仕事だが「臓器提供が成立することだけがいいと思っていません。考えた上で提供しないという選択をしてもいい。家族の気持ちを拾い上げて、みんなが納得ができる最期が迎えられたと感じられたとき、やりがいを覚えます」と語る。

 臓器移植コーディネーター 日本臓器移植ネットワークに所属するのは31人。東京、札幌、名古屋、大阪、福岡に配置されており、都道府県に所属するコーディネーター59人と連携して活動する。コーディネーターになるための資格はないものの、看護師など医療系の国家資格を持つ人が多い。病院に所属する看護師や臨床検査技師らが務め、提供者の家族や、移植を受ける患者に対応をする院内コーディネーターも重要な役割を果たす。

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