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隠れ残業 企業で横行 労働時間管理 義務化が急務

(2017年10月7日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
画像判決後に、報道陣の取材を受ける電通の山本敏博社長=6日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで

 電通の違法残業事件で、6日の東京簡裁判決は、過労自殺が起こるほどのサービス残業が横行していたと指摘した。従業員の働く時間の管理がずさんで“隠れ残業”が当たり前の企業は多い。安倍政権は「働き方改革」の柱に残業上限規制の導入を掲げ、自民党も衆院選公約に盛り込んだが、労働時間を把握していない企業では規制が形骸化する恐れがある。労働界からは「法律で把握を義務化すべきだ」との声が上がる。

 ▽指示

 「労働時間削減の対応は個々の労働者や管理を行う部長らに任され、サービス残業がはびこっていた」。6日の東京簡裁判決は、電通の労務管理を批判した。

 遺族側代理人の川人博弁護士によると、電通では自己申告した労働時間とゲートに記録された入退館時刻が1時間以上異なる場合、従業員に理由を説明させていた。

 だが、上司は「社内飲食」と仕事ではなく私的に残っていたと説明するよう、高橋さんに指示。2015年12月に自ら命を絶った高橋さんは前月にうつ病を発症していたとみられ、発症前1カ月の残業時間は約105時間に上った。

 ▽虚偽

 電通だけでなく“隠れ残業”を強いられる人は後を絶たない。東京都内のIT企業に勤める30代女性はほぼ毎日、勤務記録に午後7時ごろ退社と入力する。だが、実際は居残りや持ち帰りが日常化。女性は「会社から迫られ、虚偽入力をせざるを得ない」と漏らし、実際の残業は過労死ラインの月100時間を超えると訴える。

 女性の肩書は「課長代理」で管理職扱い。会社は、管理監督者に当たり労働基準法の規制は適用されないとして残業代を支払っていない。だが女性は、出退勤の裁量がほとんどなく、経営判断に関わる立場でもないと強調。「残業を減らせと言うが、現場に判断を押しつけている」と憤った。

画像※厚生労働省策定のガイドラインによる

 ▽不利

 安倍政権は、残業上限を「最長で月100時間未満」と設定する。ただ、女性は「月100時間まで当たり前に働かせていいと会社が考えるのではないかと怖い」と話す。規制が効果を発揮するためには企業の正確な時間管理が大前提だ。

 厚生労働省は今年1月、労働時間の把握に関するガイドラインを策定。管理監督者を含め、タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録を基にして労働時間を確認することを企業に求めるが、強制力はない。

 労働問題に詳しい嶋崎量弁護士によると、全く時間管理をしていない企業も多く、過労死や過労自殺が起こった際の労災認定や企業への損害賠償訴訟を巡り、労働者側が不利になることもある。

 嶋崎弁護士は「現状ではずさんな企業の方が有利になってしまう。労働時間の管理を義務化し、違反に罰則を設けたり、企業名を公表したりするなどの対策が必要だ」と指摘している。

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