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小児がんなど治療→予防接種の抗体失う 再接種費用 助成して

(2017年10月24日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像小児がんの息子がこれまで受けた予防接種の履歴を母子手帳で確認する母親。治療ですべて失われるかもしれないと不安を抱える=愛知県内で

 小児がんなどの治療のため、予防接種でついた抗体が失われ免疫力が低下した子どもの保護者が、再接種費用の助成を求めている。1度目こそ無料で接種できるが、再接種となると、ほとんどの自治体に助成制度がないためだ。費用は10〜15種類で20万円ほど。治療費がかかる上に収入が減って家計が苦しくなるケースは多く、「治療後もケアしてほしい」と声が上がっている。(花井康子)

 愛知県内に住む30代の女性は、2歳で小児がんにかかった次男(3つ)の付き添いのため、入院した1年2カ月の間、看護師の仕事を辞め、付きっきりで看病を続けた。会社員の夫も2歳年上の長男の世話のため、上司に申し出て残業せずに帰宅。一家の収入はこの間、計約280万円減った。

 一方、病院での食費や交通費、セカンドオピニオンを受けるための診療費などかさんだ費用は150万円。治療はうまくいき、息子は退院したが、抗がん剤治療などの影響で、それまでに受けた12種類の予防接種のうち、抗体は2種類しか残っていなかった。接種の費用は1本当たり5千〜1万円だが、住んでいる自治体に再接種の助成制度はない。女性は「治療後も、後遺症や再発などの可能性がある。健康面でも経済面でも不安は消えない」と漏らした。

 愛知県内に住む別の30代の女性も、小児がんを患う5歳の息子の看病を続けている。同じ病気の子を持つ母親らとインターネットの会員制交流サイト(SNS)などでつながり、情報交換する中で「抗体がなくなった予防接種の再接種費用は自己負担」と知らされ、がくぜんとした。

 抗体がどのくらい残っているかを調べる検査は、治療後半年くらいたって健康状態が落ち着いてから実施されるため、治療途中の今はどの程度抗体が失われるか分からない。住んでいる自治体の保健センターに問い合わせたが「対象者が増えるので予算化は難しい」と断られた。「抗体が失われたのはつらい治療の結果。経済的にもかなり厳しいのに、ばっさり切られるなんて」と話した。

 ただ、長期療養が必要な病気にかかった子どものケアは、治療後こそ必要との認識は広がりつつある。日本小児感染症学会は2014年、病気の治療の影響で抗体が減ったりして免疫力が弱くなった子どもが予防接種を受けるためのガイドラインを作成。有効で安全に接種できるためのスケジュールなどを示した。

 子どもの感染症に詳しい名古屋大大学院准教授で医学博士の伊藤嘉規さん(50)は「低年齢の子どもが抗体のない状態で集団生活をするのは不安がある。退院後こそ丁寧にケアする必要がある」と指摘。予防接種の助成について「現行は“無料チケット”の枚数が決まっていて、再発行してもらえない制度。見直す必要がある」と話している。

制度化した自治体も

 小児期に受ける予防接種は各自治体が実施。国は予防接種法で、病気の長期療養のため定期の予防接種を受けられなかった子どもに対しては、治った日から2年以内であれば通常の子どもと同じように公費で受けられると定めている。しかし、再接種に関しては「各自治体の判断次第」(厚生労働省)という。

 全国で年間2千〜2500人の子どもが小児がんと診断されているが、再接種費を助成している自治体は少数。だが、助成を始めた自治体も出始めている。

 三重県四日市市は4月から、再接種費用の助成を開始した。数年前、地域の小児科医から支援を求める声が市に寄せられたことがきっかけ。調べると、市内で白血病などの子どもがいることが分かり制度化した。

 18歳になる年の年度末までに申請すれば最大で全額を助成する。これまでに2人が申請した。病気の治療で抗体がなくなった人全般を対象とし、病気の種類や治療の範囲は制限していない。

 愛知県大府市は、小児がんの子の保護者から相談を受け、助成を前向きに検討。今後、医師らと連携し、対象や助成内容を詰めていく方針だ。

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