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新療法で花粉症根絶へ ゆたクリニック 湯田厚司さん 

医人伝

(2017年10月24日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

ゆたクリニック(津市) 院長 湯田厚司さん(54)

画像舌下免疫療法について説明する湯田厚司さん

 安全性が高く、患者によっては根治も期待できるスギ花粉症の新たな治療法「舌下免疫療法」。2014年に健康保険が適用される前から研究に取り組み、これまで約800人の患者に施してきた。「花粉症は日常のパフォーマンスを悪くさせ、学業にも影響する社会問題。根絶させるのが夢」と意気込む。

 舌下免疫療法は、アレルギーの原因となるスギ花粉の抽出物の薬液を舌の下部分に毎日垂らし、粘膜から少しずつ体内に取り込んで免疫力を高める治療法。免疫療法自体は注射で投与する方法で以前から行われてきたが、それに比べると舌下での投与は痛みがなく、重篤な副反応「アナフィラキシーショック」もほぼ起こらない。患者の2割弱が完治し、全体の8割以上で症状が改善。安全性に加え、治療の効果の高さにも手応えを感じる。

 三重大医学部講師だった05年に厚生労働省の研究班に参加し、全国の医師らとともに舌下免疫療法の研究を始めた。実際に患者を治療して臨床研究のデータを積み重ね、全国の研究機関へ提供。保険適用の実現に貢献した。日々の診療のほか、地域の医師を対象にした勉強会などで舌下免疫療法を紹介し、普及に取り組んでいる。

 課題もある。治療期間は最短でも2、3年と長期にわたるが、せっかく治療しても1、2割の患者には効果が見られないことだ。「治療前、もしくは治療開始から早い段階で、効く人か効かない人かを血液検査などで判別できないか」と、次の研究テーマを見据える。

 津市出身で、医師にあこがれて地元の三重大医学部へ進んだ。野球部に入った1年のとき、当時の顧問だった元三重大病院長の故・坂倉康夫さんと出会った。「『何事にも日本一、世界一になれ』が口癖。強い志と指導力にひかれた」。耳鼻咽喉科が専門だった坂倉さんの指導を受け、アレルギー研究の道へ。その後、花粉症の新しい治療法に挑んできたのも、「一番を目指せ」との恩師の教えがあってこそだ。

 以前、花粉症の症状が改善した患者の女性が、うれしそうに漏らした言葉が今も忘れられない。「『初めて春が来た』と言ったんです。これはすごいことやなあ、と」。そんな患者の喜ぶ姿を見ることが、何よりのやりがいだ。(河郷丈史)

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