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愛知に臓器提供支援NPO設立

(2017年10月31日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

現場啓発 再び先進県へ 絹川常郎理事長に聞く

画像あいち臓器提供支援プログラムの設立の狙いについて話す絹川常郎理事長=名古屋市南区の中京病院で

 伸び悩む臓器提供数を増やしていこうと、医学部がある愛知県内の4大学の学長や総合病院の院長らでつくるNPO法人「あいち臓器提供支援プログラム」が設立された。11月12日に名古屋市内で設立記念市民フォーラムが開かれる。理事長に就いた絹川常郎・中京病院長に、設立の背景や取り組もうと考えている事業について聞いた。(稲田雅文)

 −設立の背景は。

 愛知県は臓器移植法の施行前の1990年代、心停止後の腎臓提供で年間最大32人のドナー(提供者)を出すなど、移植の先進県だった。しかし、97年の臓器移植法施行に伴い、様子が変わってしまった。

 愛知が先進県だったのは、移植医が脳神経外科医や救急医に理解を求めていたからだ。日頃から信頼関係を築き、脳死の患者が出れば、家族に腎臓提供という選択肢があることを説明してもらっていた。

 ところが、法施行後は、移植医が臓器提供側の医師と接触しないようにする流れとなった。さらに、提供した病院が優先的に2つの腎臓のうち1つを移植できる方式だったのが、日本臓器移植ネットワークが患者の待機日数を重視する全国一律のルールとしたため、身近な患者を素通りして全国に配分されるようになった。結果、愛知からの臓器提供数は激減した。現在は腎臓については、提供をした都道府県に配分されやすいルールになったが、出ばなをくじかれたことは確かだ。透析患者向けに年1度開いていた移植の説明会が開けなくなるなど、愛知独自の取り組みを否定し、全国一律のやり方を押しつける流れはいまも続いている。

 日本の移植医療の技術は世界トップレベルなのに、日本の臓器提供数は人口100万人当たり0・7人(2015年)と、10〜40人程度の他の先進国に比べて著しく少ない。先進県だった愛知から、臓器提供数の改善に向けた活動を始め、臓器移植を国民医療として定着させるのが狙いだ。

 −活動は。

 重症患者が入院する可能性が高い救命救急センターを持つ病院でも、臓器提供の実績が少ない病院がある。ドナーとなる可能性のある患者はいるはずで、訪ねていき病院長に体制整備などを働き掛けたい。現場の医師や看護師らには、移植医やコーディネーターが出向いてセミナーを開くなど、啓発していく。

 脳死の患者が出た場合、負担が大きいのは家族だ。本人の意思を推し量って臓器を提供するかを判断しなければならない。中京病院では、患者の健康保険証を確認する際、裏面の臓器提供意思表示欄を確認している。空欄の場合、提供したいのか、したくないのか、意思表示をするようパンフレットを渡して働き掛けている。まだ始めたばかりだが、8月下旬に健康保険証に意思表示をした男性患者の臓器提供が実現した。効果を検証し、各病院にも同様の取り組みを勧める。

 最近は終末期について考えることが一般的になった。一般の市民を対象に、終末期に望む医療について考える講演会を開き、選択肢の一つとして臓器提供もあることを伝えていきたい。

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 −目標は。

 まずは1990年代のピークを目指し、年間30件程度まで県内の臓器提供を増やすのが目標だ。長期的には、欧米と遜色のない程度まで増やしていきたい。

 設立記念市民フォーラムは11月12日午後1時半から、名古屋市千種区の今池ガスビルで開かれる。入場無料。絹川理事長が設立の経緯を話す講演のほか、移植コーディネーターや臓器を提供する側の救急医、移植医らによるパネルディスカッションがある。

 あいち臓器提供支援プログラム 名古屋大、名古屋市立大、愛知医科大、藤田保健衛生大の4学長のほか、柵木充明・愛知県医師会長らが理事や顧問を務め、大村秀章・愛知県知事を特別顧問に迎えた。事務局は藤田保健衛生大に置く。

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