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食事制限嫌う患者にも好評 指導工夫で糖尿病改善 食べ方で血糖値制御  

(2017年11月7日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する
画像管理栄養士が手作りした、カロリーや塩分控えめの料理が並ぶバイキング教室=名古屋市天白区の糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKIで

 成人の有病者が推計で約1000万人となり、最も身近な病気として知られる糖尿病。治療の柱の1つにカロリー制限を中心とした食事療法があるが、厳しい食事制限のイメージが先行し、抵抗を感じる人は少なくない。14日の「世界糖尿病デー」を前に、医療現場での食事療法の取り組みと、今すぐできる対策を紹介する。 (小中寿美)

バイキング教室

 チキンの塩こうじ焼き、レンコンの赤ワイン煮、ヨーグルトムース−。白い長机に色とりどりの料理が並ぶ。すべて管理栄養士の手作りだ。名古屋市天白区の糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKIで先月あったバイキング教室。糖尿病患者と家族らは「食事指示票」に目を通し、エネルギー量を個々に確認しながら料理を選んでいく。

 品数は18種類。食べ放題とはいかないが、選ぶ楽しみがある。厳しい食事制限とのイメージが付きまとう食事療法を楽しみながら学べるようにと、同クリニックが6年前の開院当初から年に1回、行っている。

 ホタテのポワレなど8品を選んだ区内の男性(68)は指示されたエネルギー量に収まり「思った以上にたくさん食べられる」とお盆に並んだ料理を味わった。

 食事療法が血糖値を改善することは英国の研究などで証明され、薬、運動療法と並び、治療の柱。同クリニックも、食事療法を最も重要な治療と位置付ける。バイキングを導入したとはいえ、治療の基本は個別の食事指導だ。しかし、食事指導を断る患者もおり、3年前に約600人にアンケートを行うと「上から目線で言われる」「どうせ実行できない」といった声が相次いだ。

個別に1分だけ

糖尿病の最新データ

 そこで始めたのが「1分指導」。野菜摂取の大切さなど月ごとにテーマを決め、管理栄養士6人が患者と1分間、個別に向き合い、パンフレットを手渡して食事の指導をする。10カ月続けた後に再びアンケートを行うと、否定的だった患者の一部が「指導を受けたい」と答えたほか、過去1〜2カ月の血糖値の状態が分かるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)値も下がっていた。

 食事指導は20分以上でないと診療報酬点数に結び付かず、バイキングも1分指導も採算に合わないが、戸崎貴博院長(47)は「具体的で役立つ情報を提供したい」と話し、地道な指導が治療効果につながることに期待している。

 バイキングの料理は、管理栄養士が考え抜いたもので、毎日の食事に取り入れることは難しい。ただ、今すぐ始められるのが、食後の血糖値が上がりにくい食事を実践することだ。戸崎院長は「急激に上昇するような食事法を続けていると、ふだんの血糖値そのものが高くなる」と話す。

 まずは朝食を抜かない。血糖値を下げる働きをするホルモンのインスリンは朝食時に分泌された後、昼食以降でも効果を発揮し、食後血糖値の急激な上昇を防ぐ。食物繊維を含む食品を取るとさらに効果は長続きする。戸崎院長のおすすめはプチトマトだ。

 ゆっくり食べることも重要だ。おにぎり2つを5分で食べるより、20分かけて食べた方が食後血糖値の上昇は抑えられる。食事開始とともに始まるインスリンの分泌は量が増えるのに多少時間がかかるためだ。血糖値が高い人ほど時間がかかるため、食事にかける時間も長い方がいい。

 食物繊維の多い野菜や海藻類も消化を遅らせ、食後血糖値の上昇を防ぐ効果が高い。おにぎり2つに小松菜のごまあえを併せて食べると、数値は3分の1程度まで抑えられるとの実験結果がある。「野菜から食べ始めること」と戸崎院長。血糖値を上げる炭水化物は最後に食べるとよい。

 HbA1c値で5.6%以上は時々血糖値が高い「境界型糖尿病」と考えられる。戸崎院長は、この数値に達したら食事療法を始めるよう勧めている。

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