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記者から奮起、医の道へ 一宮むすび心療内科 小出将則さん

医人伝

(2017年11月14日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

一宮むすび心療内科(愛知県一宮市) 院長 小出将則さん(56)

画像患者との気さくな対話を大切にする小出将則さん

 「娘とけんかばかりするようになって」と悩みを打ち明ける母親に、気さくな口調で「それって、会話が豊かになったってことだよね。親子げんかなんてどこの家庭にもあるし」と語りかける。

 薬よりも対話、カウンセリングを重視して、うつ病、摂食障害、大人の発達障害などの人たちと向き合っている。

 もともとは新聞記者だった。バブル期の東京で、リクルート事件(1988年)や昭和天皇の崩御(89年)などの取材合戦に神経をすり減らした。一方、多忙の中で、読者からの相談電話にきちんと応じられなかったり、交通死亡事故を警察発表だけで小さな記事にしたりする日々に「本当に、人の役に立っているんだろうか」と自問し、医師への転身を考えた。結婚を決めた相手が内科医だったことも、思いを後押しした。

 29歳で退社。愛知県一宮市の自宅に戻って予備校に通い、翌年、信州大医学部に合格した。精神医学を学ぶ中で、心と体のバランスを重視する心療内科に関心を抱き、愛知県内の病院勤務などを経て、3年前に故郷で開業。人と人、心と体の結びつきを取り戻すお手伝いをしたいという思いを込め「一宮むすび心療内科」と名付けた。

 モットーは「寄り添い、ずらす」。患者の声に丁寧に耳を傾け、その考え、行動の偏りを修正するという意味。悲観的な考えに陥りやすい患者に「治るよ」と励ますのも、その一例だ。

 「患者さんから『先生のあのひと言が力になった』って言われると本当にうれしいですね」

 市民病院や内科クリニック、地元の助産院などとの連携にも力を入れている。心の不調の背景に、体の問題が隠れていることも多いからだ。その人のすべてを見ていくことが大切で、ストレスという言葉は安易に使わないようにしているという。

 社会問題にも目を向ける。元看護助手・西山美香さん(37)=滋賀県彦根市=の再審請求にも専門家の立場で協力している。14年前、入院患者の人工呼吸器を外したとして、殺人容疑で逮捕、起訴され、裁判では否認したものの懲役12年の刑が確定。服役を終えたばかり。本人には発達障害などがあり「犯行を認めた捜査段階の供述はかなり不自然。冤罪(えんざい)としか思えず、放っておけませんでした」。新聞記者の目になった。(編集委員・安藤明夫)

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