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医師が月172時間残業

(2017年11月20日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

医師が月172時間残業 東京市立病院に是正勧告 医師不足 多忙に拍車 助手の導入求める声も

 東京都の日野市立病院が、労使協定(三六協定)の上限時間を超えて医師らに違法な残業をさせたとして、八王子労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが、病院への取材で分かった。労災認定の際の目安といわれる月100時間の「過労死ライン」を上回る月172時間の時間外労働をした男性内科医もいた。

 医師の過労は、新潟市民病院(新潟市)の研修医が昨年1月に過労自殺するなど問題になっている。政府の「働き方改革」に伴う残業規制は医師への適用が5年間猶予される予定だが、長時間労働の実態がまた明らかになったことで猶予の見直しを求める声が強まりそうだ。

 日野市立病院が勧告を受けたのは昨年12月で、上限を超えたのは男性内科医のほか、看護師や事務職員4人。この男性内科医の昨年4〜10月の平均残業時間は月約122・5時間だった。病院は「勧告を真摯(しんし)に受け止めている。責任感の強い医師で、自発的に患者を診ていた」としている。

 病院はその後、業務を分散するよう院長から各所属長に指示したほか、四半期ごとに所属長の会議で職員の労働時間を報告するなど改善策を導入した。現状では100時間超の残業をする医師はほとんどいないという。

 日野市立病院は昨年4月結んだ三六協定が今年3月期限切れとなり、労使協議中。期限切れ後、同病院では協定がないまま時間外労働が発生することになり、労基署はこれについても今年6月是正勧告を出した。

 新潟市で自殺した研修医の時間外労働は、代理人弁護士によると、2015年9月にうつ病を発症する直前の1カ月でおよそ178時間だった。

 働き方改革と医師 政府は残業時間に上限を設け罰則もある「働き方改革実行計画」を3月に作成したが、医師は正当な理由なしに診療を拒めない「応召義務」が医師法で定められており、調整のため適用は5年間猶予された。このため厚生労働省は8月から医師の「働き方改革」に関する検討会を開始、2019年をめどに報告書をとりまとめる予定。検討会では、「勤務時間制限を守りながら医療の質を担保する資金や医師数が確保できない」との意見も出ている。

 勤務医が違法な長時間労働を強いられている実態がまた明らかになった。多忙の背景は医師不足。国際水準に比べ、人口1000人当たり医師数は3割少ない。改善を急ぐため医師の助手となる医療専門職の導入を求める声も出ている。

 日本外科学会が2013年4月に公表したアンケートで、医療事故や、事故につながりかねないインシデントの原因について外科医8316人の81・3%が「過労・多忙」(複数回答可)を挙げた。夜間の当直勤務明けの手術は36・0%が「いつもある」。疲労が回復しないまま医師が手術に向かう現実を示す。

 経済協力開発機構(OECD)によると、1970年に1・3人だった加盟国平均の人口1000人当たり医師数は13年に3・3人まで増えた。だが同時期、日本は1・1人から2・3人に増加したにすぎず、加盟国平均の7割の水準。医療の高度化に伴い各国が医師を増やす中、日本は長時間労働で埋め合わせをしている形だ。

 元外科医で、NPO法人「医療制度研究会」の本田宏副理事長は「医師の過労は医療の安全につながる問題だ。抜本的な医師数増加に加え、米国で活躍する、医師の監督の下で診察などを実施するフィジシャン・アシスタント(PA、医師助手)などを導入し、医師の負担軽減を図ることも大切だ」と訴える。

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