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「悪夢の耐性」に危機感

(2017年11月21日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

入院患者から検出相次ぐ CRE(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌)

画像多剤耐性菌の院内感染を防ぐため、シンクの清掃が徹底されているかを確認する医師や看護師ら=愛知県瀬戸市の陶生病院で

 多くの抗生物質が効かない多剤耐性菌の広がりが問題となっている。中でも「悪夢の耐性菌」と呼ばれ脅威となっているのが、「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」(CRE)。拡散力が強く、感染症を発症すると死に至ることもある。2014年以降、各地の病院で確認され、愛知県内の複数の病院でも入院患者からCREが検出される例が相次いでおり、病院関係者らが危機感を強めている。(細川暁子、小椋由紀子)

 毎週月曜日の午後3時。愛知県瀬戸市の陶生病院の病棟に、感染防止対策チーム「ICT」のメンバーが集結する。感染制御部長の市原利彦医師や、看護師で感染制御室長の須川真規子さんら4〜5人が「出動」してナースステーションや病室などを巡回。シンクなどの水場にぬめりがないかや、スタッフが消毒を徹底しているかをチェックしていく。

 院内感染を防ぐには、病院が一丸となって、抗生物質が効かない耐性菌と戦うことが重要だ。須川さんらが特に恐れているのが、CRE。CREは、多剤耐性菌治療の切り札とされる抗生物質「カルバペネム」でさえ効かない腸内細菌で、抵抗力の弱い患者が保菌して肺炎などの感染症を発症すると死に至る危険性がある。同病院でも15年10月〜昨年5月、入院患者11人の便からCREが検出された。患者らは保菌はしていたものの、感染症の発症はなかった。

 CREは医療従事者の手を介したり、便器やベッドの柵などについたりして接触感染で広がっていく。同病院が調べたところ、中央棟の3階から8階の、複数のシンクの排水口からCREが検出された。感染がどう広がったかは不明だが、CREが付いた患者用の器具をシンクで洗った際などに排水口に付着した可能性があるという。同病院では排水口のパイプの部品を交換するなどの対策を取ったが、今も月に1回程度はCREが検出されるという。須川さんは「CREはしつこい菌で制御は難しい。消毒を徹底するしかない」と話す。

 藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)の消化器外科の病棟でも、6〜9月に入院患者9人の便などからCREが検出された。感染症を発症した患者はいなかったが、今月上旬まで病棟での新たな入院患者の受け入れを停止。感染症対策に詳しい東京慈恵会医科大病院の医師らを招いて、手指消毒の徹底や抗生物質の使い方などについて指導も受けた。感染対策室の石川清仁室長は「耐性菌対策は、やってやりすぎのことはない」と話す。

感染防止に消毒徹底が重要

 名古屋大病院中央感染制御部の八木哲也教授によると、CREは肺炎や尿路感染症などの感染症を引き起こし、血液中に入って菌血症になると致死率は約50%ともいわれている。CREはみずから増殖するだけでなく、カルバペネムを含む抗生物質を分解する酵素の遺伝子を受け渡すことで、他の種類の細菌もCREに変えることができるのが特徴だ。

 CREの広がりは2010年ごろから欧米で問題となった。国内では14年までの約3年半に大阪の病院で、100人以上の患者がCREを含む耐性菌に感染していたことが分かり、同年から医療機関でのCREの感染例は保健所への届け出が必要となった。国立感染症研究所によると、昨年1年のCRE感染症の届け出数は1581人で、うち53人が死亡。名大でも14〜16年の3年間に約30人の患者から検出されている。

 八木教授は「CREはアルコールや熱湯に弱いため、菌が付着しやすい物品を小まめに拭くなど消毒の徹底が重要」と指摘。また抗生物質を乱用するとそれに打ち勝つ耐性を持った菌が生まれるため、「本来必要のない抗生物質を処方していないか、医師や薬剤師らが情報共有して適正使用に努めてほしい」と話す。

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