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子どもの遺伝病を研究 浜松医科大 緒方勤さん

医人伝

(2017年11月21日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

浜松医科大(浜松市東区) 小児科教授 緒方勤さん(61)

画像研究室で染色体の説明をする緒方勤さん

 小児科の臨床医師として働くかたわら、休日のほぼ全てを子どもの先天的な病気の研究にあてる。これまでに約380本の英語論文を発表。低身長の原因となる遺伝子や、生まれつき手足の指の一部がない患者の家系に同じパターンの遺伝子異常を発見するなど数々の成果を出してきた。「仕事か趣味か分からないくらい研究が好きなんです。女房には『競馬好きな人と一緒』と言われる」と笑う。

 瀬戸内海に浮かぶ高島(徳島県鳴門市)生まれ。実家は塩製造で生計を立てていた。子ども好きが高じて小児科医師を志し、奨学金をもらいアルバイトをしながら慶応大医学部へ通った。臨床の現場に入り、勉強の成果が患者の治療に生かせると思うと研究への意欲がわき出た。

 研究に飛び込むきっかけとなったのは、1983年から働いた群馬県の病院で診た男の子だった。15歳で138センチという低身長で、遺伝子を調べると、通常は真っすぐに伸びるX染色体が丸い環状になっていた。当時はX染色体に異常がある男の子は生まれてこないとされており、世界初の事例だった。染色体の末端が切れていると、状態が不安定になり環状になる。「その部分に身長に関係する遺伝子があるはず」と考えた。

 6年後、英国に留学し遺伝子の研究室に入り、英語もよく分からぬまま実験の方法を一から学んだ。指導教官からは別のテーマを与えられたがそれを拒み、低身長の原因遺伝子の研究に没頭。図書館に2週間通い詰めて、遺伝子発見の可能性を仲間に発表した。「ろくに英語も話せないのに、教官とやり合ったのは自分一人だった。つらかったが自由にやらせてもらえて助かった」。その後、ドイツ人研究者と10年間、共同で取り組んだ研究で、低身長や骨系統疾患の原因となる「SHOX遺伝子」を発見した。

 国立成育医療研究センター研究所などを経て2011年から浜松医科大で勤務する。9月には、成長障害などを対象とした小児内分泌学の発展に貢献したとして日本人として初めて「欧州小児内分泌学会国際賞」を受賞した。若い医師には臨床の現場で患者に向き合いつつ、研究することを提案する。「すべて患者さんがきっかけ。仕事人間に見えるが、知りたいという好奇心があってやる気になれる。楽しいからやっている」と言い切った。(相沢紀衣)

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