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アプリで糖尿病予防 指導医と取り組み共有 大規模研究へ

(2017年11月28日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

応援キャラも登場

七福神アプリによる生活改善指導

 糖尿病患者や予備軍の人にやりがいを感じながら健康管理を続けてもらおうと、スマートフォンのアプリを使って体重などを管理する愛知県健康づくり振興事業団(知多郡東浦町)などが開発した仕組みが、2018年1月から全国展開される。16年度の経済産業省の実証実験で効果が認められたため、全国の医療機関や健診機関に協力を呼び掛けて2000人が参加する研究が始まる。(稲田雅文)

 東浦町の鉄鋼会社の管理職の男性(52)は、40代半ばになったころから運動不足や飲酒習慣で体重が増加した。会社の健康診断の血液検査では、糖尿病の診断指標で、過去1〜2カ月の血糖値の状態を示すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が高い状態に。産業医からしばしば「生活を改善しないと服薬が必要になる」と警告されていたこともあり、会社の健康保険組合の勧めで昨年8月から実証実験に参加した。

 同事業団が運営するあいち健康の森健康科学総合センター(東浦町)で、体重、血圧の測定や血液検査を受けた。歩数に加え1日の総消費カロリーが分かる活動量計、体重と体脂肪率を測る体重体組成計、血圧計を渡され、所有するスマホに実証実験のためセンターなどが開発した「七福神アプリ」を登録した。渡された機器からは単純な操作で測定結果をスマホに送信でき、体重の変動などが一目で分かる。

 指導された通り、毎日測定とスマホへの送信を続けた。通勤でバスを利用していた区間を歩いたり、食事のカロリーを意識したり。アプリを開くと、七福神のキャラクターが週2回、登場し「たくさん歩いておる」「血圧はいい状況じゃな」など、きちんと運動や測定を続けたことをたたえるメッセージが表示された。アプリが励みになってウオーキングや食事の節制が続き、体重が数キロ減ってHbA1cの値も低下した。

 男性は「体重などを測定し、良い結果だとうれしく、続けていて楽しかった」と話す。今年1月に実証実験が終了。今も活動量計は携帯しているが、アプリを使わなくなったら体重を毎日測定する習慣が続けられなくなり「体重がリバウンド気味」といい、「機会があったらまた参加したい」と語る。

 糖尿病の進行を食い止めるには、体重管理と運動が不可欠だ。しかし、重症化するまで自覚症状がないため、食事の制限や運動をおっくうに感じ、医師の指導を受けても取り組みが続かないケースは多い。医師の側としても、指導した通りに患者が健康管理に取り組んでいるかを知るすべはなく、自己申告を信じるしかない課題があった。

 アプリはこの課題を克服しようと開発。スマホに七福神のキャラクターを登場させて励ます支援で自己管理意識を高めるとともに、測定データをネットを通じて集めることで、医師は患者の体重の推移や運動の取り組み状況が具体的に分かるようになった。データに基づき、より適切な治療方針が立てられる。

 昨年度の実証実験には、名古屋大病院など東海地方の23機関にかかっていた181人が参加。糖尿病の治療薬は飲まず七福神アプリを活用した30人を調べると、HbA1cの値の平均が3カ月で6.99%から6.43%へと0.56ポイント低下。明らかに改善した。

 成果を受けて、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が支援する研究開発事業に採択され、17年度から3年間の実証研究の実施が決まった。糖尿病の軽症者2千人に参加してもらい、アプリも改良して有効性を検証する。

 同事業団の医学博士津下一代さんは「七福神にどのようなメッセージを語らせると患者の行動を促すことができるのかを調べたり、ゲーム感覚でウオーキングなどに取り組める仕掛けを入れたりして、やる気を維持できるようにしたい」と意気込む。

 研究に参加できるのは、HbA1c6.0~8.9%の範囲の人など一定の基準を設けている。現在、参加する医療機関や健診機関、健康保険組合を募っている。個人には医療機関などを紹介する。問い合わせは、同センター=電0562(82)0211=へ。

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