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子の虐待死事例データ化 小児科医 沼口敦さん

医人伝

(2017年11月28日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

名古屋大病院(名古屋市昭和区) 小児科医 沼口敦さん(45)

虐待死を見逃さないために、子どもの死亡事例のデータベース「チャイルド・デス・レビュー」の制度化に取り組んでいる沼口敦さん虐待死を見逃さないために、子どもの死亡事例のデータベース「チャイルド・デス・レビュー」の制度化に取り組んでいる沼口敦さん

 子どもの死亡事例を集めて死に至った原因や背景を調べ、再発防止に生かすためのデータベース「チャイルド・デス・レビュー」(CDR)の制度化に取り組んでいる。虐待死を見逃さず、防げるはずの事故を繰り返さないためだ。

 岐阜県出身で、1996年に名古屋大医学部を卒業。心臓病専門の小児科医として愛知県内の複数の病院に勤務する中で、子どもが食事を与えられていないことが原因で死亡した疑いがあるケースを経験した。だが、ネグレクト(育児放棄)と断定するだけの根拠がなく警察に通報することはなかった。病気や事故で亡くなった子どもの解剖は親が望まない限り行われないことが大半で多くは真相が分からない。「表に出ていない虐待関連死は相当あるのではないか」との思いを抱えていた。

 2009年に名大病院救急科に赴任後、集中治療室(ICU)に勤務する傍らで愛知県内の子どもの死亡事例の調査を開始。県医師会に協力を呼びかけて各地の病院からカルテや死亡診断書を集め分析した。昨年11月には児童相談所や警察なども参加した検証会議を行った結果、自治体が把握しているよりも多くの事例で、虐待死の疑いがあることが分かった。14年に県は2人を虐待死として国に報告していたが、その他にも8人の子の死亡に虐待が関与した可能性があった。母親が「子どもがかわいくない」と言っていたり、直前の健診で子どもの体にあざのような痕が見つかったりしていたのに調査や対応が間に合わずに亡くなっていた。

 虐待ばかりではない。同年に県内で亡くなった子ども241人のうち、風呂での溺死やベッドと壁の隙間に落ちて窒息死した事例など、51人の死亡は親が注意していれば防げたはずだった。これまでこのような調査自体がなく、教訓は生かされていなかった。日本小児科学会で調査結果を発表したところ、愛知県での取り組みは先進例として注目を集めた。

 昨年末からは厚生労働省の研究班の一員として、全国の子どもの死亡事例をデータベース化するCDRの制度化に乗り出した。今月21日に開かれた愛知県の協議会でも、死因究明の重要性を強調。「次の犠牲者の子どもを出さないためにも、医療機関や行政が情報共有することが重要。諸外国で普及しているCDRを日本で広げたい」と力を込める。(細川暁子)

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