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〈がんを生きる女性たち〉(上) サロン

(2017年12月3日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

不安、悩み「ひと休み」

画像子どもたちも同席して開かれたがん患者のサロン=今年8月、浜松市中区の聖隷浜松病院で(袴田貴資撮影)

 聖隷浜松病院(浜松市中区)でこの夏始まったサロン「いっきゅう.com」には、30〜40代の女性がん患者が集う。その名には「がんで人生を『ひと休み』する」という意味が込められている。

 浜松市の30代の女性は、1歳の子どもを連れて参加した。産後3カ月で乳がんに気づき、手術で右胸を切除した。不安は多々あるが、「子どもが胸の詰め物をおっぱいと覚えてしまった。そのへんに置いてあると渡してくれる」とみなを笑わせた。

 若い世代のサロン設立を要望したのは、3年前に肺がんが見つかり、入退院を繰り返してきた磐田市の女性(40)だ。

 がんの発生した臓器が分からない「原発不明がん」との診断も受けた。「この若さで…。子どもが小さいのにどうしよう」。答えの出ない問いが次々と浮かんだ。入院中には、交流の場にも足を運んだが、周りは高齢者ばかり。悩みを話そうにも違和感があった。

 インターネットを通じて同じ病気で子育て中の女性に出会い、ようやく気持ちを打ち明けることができた。「人を救うのは人のつながり。抱え込まない方がいい」。そう気づき、病院にサロンづくりを提案。「がんは治らない病気じゃなくて、付き合っていく病気。他の患者さんの話を聞ける場は本当にうれしい」。サロンは男性にも開放されているが、今のところ参加者は女性ばかりだ。

 看護師や臨床心理士らも顔を出す。子どもを保育園に預けて働きたい30代の女性が「がん患者のママのための再就職講座はないかな」とつぶやくと、医療ソーシャルワーカーの島田綾子さん(40)がすかさず「通院の頻度や年齢に合わせてハローワークで探してもらえるよ」と言葉を掛ける。

 医療費や生活費のこと、仕事の探し方、セカンドオピニオンのことなど、何でも話ができる。島田さんは「患者の気持ちが本当に分かるのは医療者でなくやっぱり患者。治療期か終末期かで悩みの内容も違う。このサロンが当事者同士のつながりの場になれば」と期待する。

 サロンを提案した女性は、子ども2人を連れて参加した。「成長するにつれ、病気のことを察して優しくしてくれるようになったんです。髪が抜けてウィッグをしている私を『ママ、アンパンマンみたい』って慰めてくれて」。そう言って小学1年生の娘(6つ)をじっと見つめた。

 医療の進歩によって、少しずつ「付き合いながら治療する病」となってきたがん。ただ、仕事や子育て、家事など多くの役割を担う若い世代の女性にとって、治療と生活の両立は簡単なことではない。女性がん患者の就労や育児をサポートする静岡県内の取り組みを紹介する。(この連載は、飯田樹与、相沢紀衣が担当します)

 メモ 国立がん研究センターがん対策情報センターによると、2013年に新たに診断された女性のがんは乳がんが最も多く、大腸、胃、肺、子宮と続く。がんの罹患(りかん)率は男女とも50代から増え、高齢になるほど上昇していくが、30〜40代では女性が男性を上回っている。

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