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アルコール依存症と闘う 苦い過去・・・ 自分見つめ直す 回復へ周囲が理解を

(2017年12月4日) 【中日新聞】【朝刊】【長野】 この記事を印刷する
画像ストレスやつらい記憶を和らげたいと飲酒に走る人も。依存症への偏見をなくし理解を深めることが大切だ=岡谷市で

 忘年会で飲酒の機会が増える師走だが、アルコール依存症と闘う人たちにとっては誘惑の多い時季でもある。酒による過ちと日々向き合いながら、断酒に努力する人たちを取材した。(福永保典)

 「日馬富士も飲んでなければね」。下諏訪町の諏訪共立病院で週1回開かれる依存症の人たちの自助グループ「酒害者回復クラブ」。芸能人の酒の失敗にまつわる世間話から始まり、やがて話題は自らの体験へと進む。

 「寝室にたくさんの虫がはっているのが見えた」。73歳の男性経営者は幻覚の怖さを語り出した。高校時代から飲み始め、就職後は毎朝目覚めてから飲み、車を運転し出勤。「酒の勢いで仕事をしていた」。50台半ばで膵臓(すいぞう)や腎臓を患い入退院を繰り返した。

 8年前、幻覚に襲われた。寝室の隅で黒い虫がうごめくのが見えた。「大きなクロアリのような虫。はしでつまんで主治医に見せたら『ただのホコリじゃないか』と笑われた」。夜中に人のうめき声が聞こえる幻聴にも悩まされた。

 依存症は酒量をコントロールできなくなる病。飲酒が悪いと分かっていても飲み続けてしまう。家庭崩壊や失業など正常な社会生活を送ることが困難になったり、臓器障害など健康が損なわれる人も多い。

 回復クラブは、県立こころの医療センター駒ケ根(駒ケ根市)で依存症の治療を受けて退院した元患者らが参加している。諏訪地域在住者が中心で、飲酒運転や家庭内暴力など苦い過去を告白する一方、他のメンバーの体験談に耳を傾けながら、自分の生き方を見つめ直していく。

 65歳の無職男性は幼少時、親から精神的虐待を受けた。大学卒業後に公務員になるが、24歳でうつ病を発症。失業を余儀なくされた。挫折感やむなしさを紛らわそうと、ギャンブルや買い物などに依存し、46歳で酒に手を出した。

 8年間断酒したが、その後再び飲酒。「自分でも理由の分からぬ怒りで妻に暴力をふるった」と涙を浮かべた。居酒屋が閉店しても1人居座り、飲み続けたことも。「社会から排除されているようで毎日が苦しかった」。2年前から断酒に挑戦している。

 医療センターの臨床心理士、大越拓郎さんは「病気なのに『意志が弱い』『だらしない』などと偏見にさらされ、家族も含め孤立している人は多い。回復とは酒に奪われた人生を取り戻し、その人本来の生き方ができるようになること。周囲の人たちの病気への理解が大切だ」と話している。

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