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〈がんを生きる女性たち〉(中) ハローワーク

(2017年12月4日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

治療と就活 両立ケア 拠点病院で毎週相談会

画像患者の希望や病状などに沿って相談に乗る就労支援ナビゲーターの柏木ちもとさん=長泉町の静岡がんセンターで

 小高い丘の上にある静岡がんセンター(長泉町)。その一室で毎週1回、ハローワーク沼津による就職相談会が開かれている。「がんの人を優先的に受け入れてくれる企業はありますか」。病を抱えながらも職に就きたい人たちが、切実な思いで扉をノックする。

 ハローワークは昨年度から、全国でがん患者らの就職を支援する事業に乗り出した。沼津など5カ所では既に2013年度から、モデル的に取り組んでいる。

 就職に関する多彩なノウハウを持つ就労支援ナビゲーターが近くの拠点病院に出向き、患者一人一人の病状や就労経験などに照らして就職先を紹介する。

 県内の50代女性も、就労支援を受ける。福祉施設で介護職に携わっていたが、4年半前、体がひどく疲れやすくなって受診した。乳がんだった。

 抗がん剤治療と手術を受けた当時、2人の子どもは中高生。体調を管理しつつ、家族に不安を与えず、負担も掛けないよう、仕事と家事、育児にギリギリまで取り組んだ。「女性ががんになると、家の機能が止まってしまう。生活全体の優先順位のつけ方が難しかった」と振り返る。

 しかし2年前、定期健診で骨への転移が発覚し、死を身近に感じた。「家族との時間をもっと取りたい」。転職を決意した。

 仕事探しの理由は他にもある。病気に配慮してくれる同僚に後ろめたさを感じてしまう。利用者をベッドから車いすに移すなど体力的にもきつい。しかし、家計を考えれば、働かないわけにはいかない。「病気になった自分は足手まとい」。そんな思いがよぎるが、社会と関わることで「まだ役に立てられる。もうちょっと頑張ろう」とも思える。複雑な思いを抱えながら、今も転職先を探している。

 相談に乗る就労支援ナビゲーターの柏木ちもとさん(58)は「病状も治療の経過も人それぞれ。きめ細かなサポートがいる」と患者に寄り添う。センターの医療ソーシャルワーカーと情報交換をしながら就職先を探し、「会社に病気を打ち明けるべきか」などの悩みにも耳を傾ける。

 企業側が出す条件の変更を求めて交渉することもある。「その人に沿った働き方を柔軟に考えてくれたらうれしい」と企業側にも理解を求めている。

 がん患者は増え続けており、今や働きながら治療する病気となった。だが、ハローワーク沼津で、がん患者を新規採用すると自ら名乗りを上げたのは、この4年間でまだ5社しかない。

 メモ がん患者のうち3人に1人が、働く世代の20〜64歳。厚生労働省が2010年の国民生活基礎調査を基に集計したデータでは、仕事をしながらがん治療で通院している人は約32万5000人に上る。

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