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〈がんを生きる女性たち〉(下) 病院の探検隊

(2017年12月5日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

「親子一緒に」こだわり 怖さ払拭、信頼関係大事に

画像放射線治療装置を体験する「探検隊」の子どもたち=浜松市中区の聖隷浜松病院で

 聖隷浜松病院(浜松市中区)に今年の夏休み、白衣を着た「小学生探検隊」の姿があった。

 クルクルクル...。天井に届きそうなほど大きな放射線治療装置が、寝台に横たわった体の周りを回る。いろいろな方向から腫瘍を照射できるが、体験した「隊員」は「ちょっと怖いかも」と苦笑いをみせた。

 続いては、スタッフが操作する隣のモニター室へ。治療室の様子がモニターに映し出され、「隊員」が「ピースして」とマイクごしに注文すると、治療室内のスタッフがカメラに向けてピースサイン。すかさず別のスタッフが「『怖いな』と思っている患者さんも、人の声を聞くと安心できます」と説明すると、子どもたちがうなずいた。

 「夏休み こども探検隊!」と銘打ったこの催しは、聖隷浜松病院が5年前から、がん患者の親を持つ小学生を対象に行っている。精神的、肉体的に負担がかかる家族は「第2の患者」ともいわれる。特に、子どもは親の変化を敏感に感じ取り、ストレスをため込むこともある。

 親側からも「子どもの質問にどう答えたらいいのか分からない」などの相談が寄せられることから、子どものサポートに軸を置いた取り組みをスタートさせた。こだわったのは、親子が一緒に院内を回ること。病院側は「同じものを見ることで『病院は怖いもの』というイメージを払拭(ふっしょく)し、家で話し合ってもらえたら」と期待する。

 3人の子どもを持つ浜松市内の女性(39)は、小1の長男、小4の次女と参加した。乳がんと判明したときに、子どもたちには伝えてあった。死にはしないこと、治るらしいが1年は仕事を休むこと、具合が悪くて寝込むこと、治療の副作用で髪が抜けること−。

 長男はよく分かっていないようだったが、次女は重い病気だと感じているようだった。中1の長女は面と向かって不安を口にしなかったが、後でこっそりと「お母さんは大丈夫なの?」と祖母に尋ねた。

 「探検隊」に参加してから、親子で話がしやすくなった。テレビを見て「あの器具、触ったよね」、手術の前にも「この間、入った部屋で手術するんだよ」。母親がどこでどんな治療をしているのか、イメージが湧くようになった。

 病院の担当者も手応えを感じている。「子どもに病名を伝えるかどうかはそれぞれだが、何より大事なのはコミュニケーション」。女性も振り返る。「親子一緒だからよかった。マイナスの部分を見せるというよりも、未来につなげるものを見せてもらった」

(この連載は、飯田樹与、相沢紀衣が担当しました)

 メモ がんになった親とその子どもをサポートする国内初のNPO「Hope Tree(ホープ・ツリー)」(川崎市)によると、18歳未満の子どもがいる新規患者は推定で年間5万6000人。2009〜13年に国立がんセンター中央病院に入院した20〜59歳の患者のうち、18歳未満の子どもがいる割合は24・7%だった。女性患者の平均年齢は43・7歳で、子どもの平均は11・2歳だった。同NPOでは、小学生を対象に病気の知識を得たり、孤立感を弱めたりするサポートプログラムを行っている。

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